麻酔薬を背中に…赤ちゃんへの影響は?

無痛分娩とは、局所麻酔で陣痛を緩和しながら出産する方法だ。一般的には、背中に細いチューブを入れて、脊髄を守る硬膜の外側に局所麻酔薬を少しずつ注入、陣痛の痛みを和らげる。

麻酔薬は胎盤を通過してわずかに赤ちゃんに移行するが、多くの新生児を調べた結果、麻酔薬の影響はないとされている。

英語では「labor analgesia(分娩時の鎮痛)」。日本ではなぜか最初に「無痛分娩」と訳された。

正確には「和痛分娩」。最大の痛みを「10」とした時に、「2~3」に緩和される分娩法だ。世界保健機関(WHO)は、出産時に麻酔による痛みの緩和を推奨している。

日本では1割、アメリカでは7割

1907年に開業した、長崎市の「しもむら産婦人科」。4代目下村修医師は、麻酔科標榜医(厚生労働大臣の許可制)の免許を持ち、無痛分娩の症例数が多い北里大学産科での診療経験を持つ。

しもむら産婦人科では、2011年から無痛分娩を始め、2025年2月までに約400例の無痛分娩を行った。年齢19歳~43歳まで、平均では32.2歳。全分娩数の約1割が無痛分娩を選択するという。

日本産婦人科医会によると、日本での総分娩数に占める無痛分娩の割合は、2017年は5.2%だったものの、2022年には11.6%と増加傾向にある。

一方、アメリカでは73.1%(日本産科麻酔学会HP)が無痛分娩を選択している。日本で無痛分娩が進まない背景には、日本人ならではの固定概念があるという。

しもむら産婦人科 下村修 医師:
「お産は『痛くて当たり前』、『お腹を痛めて産んでこそ母性が育ち、愛情が湧く』という日本に根付いている固定概念から、女性は『無痛分娩』を選択しにくかったのではないでしょうか。ただここ数年は、痛くなくて安全に産めるんだったらそうしたいと、『痛くないお産』を希望する女性が増えてきました」