「セックスの拒否」は離婚の理由になるのか

自分ではコントロールできない、相手への嫌悪感。しかし「誘いを断ること」「拒むこと」は後ろめたい…。そんな気持ちになる根底には、「夫婦ならして当然」という自分の中の価値観、さらには「性欲の我慢は身体に悪い」という勘違いもあると、松尾さんは指摘しています。

さらに、断られた側が『セックスの拒否は離婚の理由になる』と主張することも。

夫婦関係専門カウンセラー・松尾聡子さん:
「セックスの拒否が離婚の理由になるという判例は、調べたところ見当たらない(2025年2月28日時点の松尾さんの調べ)。確かに、意地悪や罰など相手をコントロールするために悪意を持って拒否すると、それは夫婦関係を継続し難い事由にはなると思います」

「婚姻を継続し難い事由」

民法770条では「婚姻を継続し難い重大な事由」が離婚の理由になると定められています。しかし「性の拒否=離婚の正当な理由」 とは断言されていません。松尾さんは、性の拒否が離婚理由として認められるケースは「ほぼない」と言います。

夫婦関係専門カウンセラー・松尾聡子さん:
「私のもとに相談に来る方々は、そういう気持ちになれないことに悩んでいます。『どうして私はしたくないんだろう…』『拒否したことで相手を傷つけたのではないか…』と苦しんで悩んでいる。そんな思いの中で拒否することが「婚姻を継続し難い事由」なのでしょうか」

夫婦間でも同意は必要

2024年4月、DV防止法の改正によって、夫婦間でも同意のない性行為はDVと認定されるようになりました。しかし、未だに「夫婦だから当然」 という価値観は根強く残っています。

夫婦関係専門カウンセラー・松尾聡子さん:
「力によって行為を押し付けることはNG、という考えは浸透してきたとは思います。しかしやはり『夫婦はして当然』という風潮はある。『なんで夫婦なのに同意が必要なの?』とも」

「母親や祖母に『ちゃちゃっと15分ぐらい我慢すれば終わるんだから』『みんな我慢してるのよ』と言われたケース、『妻の(夫の)機嫌をそこねないように、月に1回は必ずするようにしている』という方もいます。これらは脈々と受け継がれてしまった誤った価値観です」

「お互いに『性欲の捌け口』になってはいけない。夫婦間でも、同意が大前提。性の価値観はアップデートすべきです」