「世は原爆なんてとっくの昔に忘れてらあ…」1963年3月14日、長崎原爆資料館で、ひとりの被爆詩人が静かに命を絶った。40歳、原口喜久也。なぜ彼はこの場所を選んだのか? 彼が遺した詩が、今も問いかける。

長崎原爆資料館で命を絶った詩人

「世は原爆なんてとっくの昔に忘れてらあ…」この言葉は、原口喜久也の遺稿詩集『現代のカルテ』(1964年)に収められている。

その時、誰かが俺の背後でつぶやく……
「世は原爆なんて とっくの昔に忘れてらあ…」
俺はその声にふり向く。
だが、誰もいない――。(遺稿詩集『現代のカルテ』より)

1963年3月14日、長崎原爆資料館(当時の国際文化会館)の4階で、原口は首を吊った。

この場所を選んだのは、単なる偶然だったのか。それとも彼の最後のメッセージだったのか。