幼いころの戦争体験から平和な世界を願い続け、仏像を彫り続けている彫刻家が日南市にいます。およそ60年にわたって平和への祈りを形にしてきた彫刻家の思いにカメラを向けました。
「僕は仏師と違うので、僕なりの仏を探しながら、ずっといままで仕事してきたような気がしてます。」
彫刻家 橋口弘道さん(87)
「現在、各地でいろんな戦争が続いてて、ますます凄惨な様相になってきてますけど、僕の中ではそれは、自分がものづくりをするときの根底になってて、平和を願いながらやるという、そしていま悲惨な目に遭ってる人たちに心を寄せるというか。」
橋口さんの作品作りへの思いは幼少期の戦争体験が影響している
「空襲がすごく激しくなって、街には焼夷弾が落ち、夢中になって遊んでいたら、気が付くと、すぐそこにパイロットの顔が見えるぐらいのところまで戦闘機が迫ってる、機銃掃射を受けるというようなそういう体験がありました。根っことして僕の中に、そういう戦争の恐怖とか不条理さとか、そういうのがずっとありますので、今年戦後80年とかいって、いろいろ報道されたりしてましたけれども、僕にとっては、ずっとそれは(心に)沁みついてて僕はそういう祈りの世界みたいなのにたどり着いたのも結局は、そこが原体験があったからじゃないかなと思ってます。」
「この作品は(戦争で)破壊されて廃墟になったような街の中に飛び込んで、そこで泣きわめいてる子どもたちを救いあげてる、そういうお地蔵さんを彫りたいと思ってて。」
「素材は木であり石であり、そういう物質ですけども、それがこういう祈りのかたち姿になったときに、それは単なる石や木ではなくて、そういう本当の意味での生きた存在になるんだろうと思ってます。」
「いますごく日本が戦争をできるような国にするためにいろいろ煽るような風潮がすごく強くなってきてるような気がするんですけどね。こういうときこそ本当にみんなもう一度(過去を)振り返って、こういう流れをとどめて人々の気持ちが平和のほうに向かうようになっていかなきゃなと思ってます。」
「この一斧一斧が祈りなんですね。」
「これがやっぱり世界にこの音が伝わっていけばいいなと思いますね。」
「この世をおさらばするまでに手足の動く間は、ずっとこの仕事をやっていきたいと思っています。」