震度6強の揺れが石川県珠洲市を襲った奥能登地震。6月26日時点の被害状況は全壊が36棟、半壊が256棟、そして一部損壊が1096棟となっています。この被災者の中には、再起に向けて家を修繕する道を選んだ人や家を手放す決断をした人など、状況はさまざまです。

生活再建は道半ばです。住まいを失った人は今後どうすればよいのか。そして行政には今どのような支援が求められているのでしょうか。

「この畳は軽いやつなんです。安くあげるために」
5月5日の地震で自宅が半壊した濱塚喜久男さん(69)は、積み上げられた畳をパンパンと手で叩きます。応急危険度判定で“危険”を意味する赤紙が貼られたものの、住み慣れた家を修繕することに決めました。親戚の業者に見積もりを依頼すると…。

「狂いました…できれば75歳まで働く」

修繕費用を計算する濱塚さん

濱塚喜久男さん
「“なるべく一番安いがで”と頼んだ」
Q 窓を直す分を足すと?
「300万円はかかりますよ。畳と冷蔵庫…テレビは買わないとダメみたい」

県と市が独自に設けた被災者生活再建支援制度では中規模半壊より下の半壊住宅(損害割合20%以上)も支援の対象となり、最大150万円までは支給されることになりそうです。しかし、被災者の生活支援を研究する井口克郎准教授は。

神戸大学大学院人間発達環境学研究科 井口克郎 准教授
「家を建て直すということになれば…水準としては不十分な金額です」

家屋の建て替えで被災者の6割が貯金を取り崩した


井口准教授らが16年前の能登半島地震の際に、全壊世帯を対象に行った調査によりますと、家屋の再建費用を工面するうえで最も多かったのは“義援金”の活用。次いで行政からの支援金や保険金などが続きますが、およそ6割の人は貯金を取り崩さざるを得ませんでした。

井口克郎 准教授
「(2007年の)能登半島地震の時もそうだったけど、住宅はなんとか再建や修理を一定程度できたとしても老後にあてにしていたお金が無くなってしまう。生活支援はかなり長期的に補償をいれていかないと」

保険金についても高齢となり支払いを続けられず、解約したあとに被災した人が多かったといいます。

濱塚喜久男さん
「あと僅かな余生を好きなことしておこうと思ったけど…狂いました。できれば健康なら75歳位まで…会社がいいって言えばですよ」

濱塚さんも、老後の生活費としてあてにしていた貯蓄を自宅の修繕に充てることになり、引退する予定だったタクシー運転手の仕事を今後も続けることにしています。

「散々泣きました」家を解体するしかない被災者も

重機で解体される家屋

住宅が重機によって壊され、大きな音が響きます。そのようすを見つめていたのは60年以上、この家に住み続けたAさん。

Aさん
「長年色んなものが詰まっている家だから、さっき散々泣きました。もう涙が出て止まりません」

Aさんの自宅は、応急危険度判定で“要注意”を意味する黄色の紙が貼られていたのですが…。

Aさん「大工さんからも家には近寄ったらダメ、危ないですって言われて…」

60年以上住んだ家を撤去

突き付けられた現実。Aさんには、住み慣れた家を解体する道しか残されていませんでした。全壊と判定され、費用は行政が全額負担します。

Aさん「地震のない平和なところに行けばいいけど…やっぱり長い間住んでいるところを離れるのは生きることを奪うのと一緒。だから離れたくない」

Aさんは自宅近くの仮設住宅に入居することに。しかし、住めるのは2年間です。

Q 2年後はどうする?
Aさん「まだまとまってない。息子と相談しているけど…深く話をしないと決定しない」
住まいを失ったAさんは不安を抱えたまま、仮設住宅での生活を送っています。

井口克郎 准教授
「けっこう能登の人は自分の住んでいる土地とか家にものすごく愛着があるから、本当に苦渋の決断だったと思うのですけど…能登半島地震のときも2年で切ったんです」

仮設住宅の入居期間について、井口准教授は2年という期限にしばられない対応をとるべきだと訴えます。

井口克郎 准教授
「“みんな2年なんだから”とやるんですけど、そこで平等とか公平性のラインを引くのではなくて住居を確保して生活の目途がたつかで平等のラインを引いて。被災者に寄り添った行政の対応を期待したい」

6月中に応急仮設住宅16戸完成

仮設住宅をめぐっては、建築基準法で入居期間が最長2年間と定められていますが、東日本大震災の被災地では例外的に延長したケースもあります。この一方、珠洲市は5月5日の地震で被災した市民のうち、自宅の再建が難しい人を対象に2年後をめどに新たな公営住宅を整備する方針です。仮設住宅への入居期間が最長2年間のため、退去後の住まいを確保することにしています。

これまでの教訓を生かし、被災者目線に立った柔軟な対応がいま求められています。