2012年4月29日の早朝、群馬県藤岡市の関越自動車道で、石川から東京ディズニーリゾートに向かっていた高速ツアーバスが、運転手の居眠りが原因で道路脇の防音壁に衝突し、7人が死亡、38人が重軽傷を負いました。当時17歳だった岩上胡桃さんを失った父・剛さん(50)は「利益より命を大切にする社会」を訴えます。

墓参りでインタビューに答える岩上さん
事故から10年の命日となった29日。一人娘が眠る白山市内の墓に手を合わせた岩上さんは、次のように切り出しました。

「10年というと、節目みたいなことを言うが、私の感覚では9年も、11年も、何年経とうが別に節目もない。10年経って少しずつ、実際娘が家にいないということをだんだん実感はしてきたが、まだやっぱり心のどこかで信じたくないという気持ちがずっとある。1日たりとも忘れたことはない」(岩上さん)

岩上さんは今年も群馬県まで1人で車を運転し、高速道の下に設けられた献花台に花を手向けました。

藤岡市の事故現場で手を合わせる岩上さん
「現場に行くとやっぱりつらい。本当にここで事故があって、7人の方が亡くなって、けがをした方も大勢いた。事故当時のことを思い出して本当はつらいが、親の務めとして、元気な限りは毎年4月29日には藤岡の現場に行きたいと思っている」(岩上さん)

この日、胡桃さんの墓には、小学校や高校の同級生も訪れました。小学校時代からの友人だった前田明香さんは、毎年、胡桃さんに「みんな元気に過ごしているよ」「見守っていてね」と語りかけるといいます。

墓参りに訪れた胡桃さんの友人
「毎年ここに来ると、自然と涙が出てくる。最後に見たときの顔もしっかり覚えていて、ずっと忘れられない。“もう少し早く運転手の人が目を覚ましてくれていたら“ “あと何秒早かったら“と、そんなことばかり思ってしまう。今でもまたどこかで会えるんじゃないかという気持ちで、未だに受け入れられない」(前田さん)

17歳で死亡した岩上胡桃さん
看護師を目指していたという胡桃さん。医療従事者になった前田さんですが、一緒に働く夢は叶いませんでした。

「“くる”はすごく優しくて、明るい子なので、きっと仕事でも誰かに優しく明るい気持ちで接していたと思うので悔しい」(前田さん)

小学校時代からの友人だった前田さん
墓に手を合わせる娘の友人の姿を見た岩上さんは、感謝を口にしながら、複雑な思いを抱えていました。

友人の墓参りを眺めていた岩上さん
「いま見ていたら(友人は)子どもを抱っこしている。娘もこんなふうになっていたのかな。やっぱりつらい部分も正直ある。うれしいけど、生きていたらこうなんだなと考えるとちょっとつらい」(岩上さん)