甲子園を目指す夏の高校野球県大会は7月、開幕します。8年ぶりに夏の甲子園出場を目指す金沢市の遊学館高校は20日、最後の夏となる3年生だけである特別な試合が行われました。

ベンチ入りできるのは20人。3年間が凝縮された仲間との、そして親子の絆を取材しました。

20日に行われた遊学館高校と金沢桜丘高校の試合。この2校の一戦は、9年前から毎年この時期に行われています。ベンチ入りする選手は3年生だけ。夏の大会を目前に控える中、公式戦のメンバー入りをかけた最後のアピールの場でもあります。

野球に集中できる環境を求め、東京から石川にやってきた遊学館高校3年生、髙橋祥太選手。特別な思いでこの試合に臨みます。

遊学館高校 髙橋祥太選手
「春は入れなかったので…この夏でメンバーに入って結果を残したいと思う」「背番号をもらえなかった時は、両親に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。それが一番悔しかった」

“甲子園に2人で出る”仲間の思いを背に

同じ背番号6のユニフォームに袖を通す2人


強豪校で試合に出ること、ベンチに入ることの厳しさを感じた3年間。髙橋選手を傍らで見てきたのが、中学時代からの同級生で遊学館不動のレギュラー、岩谷波瑠選手です。選手それぞれ好きな背番号を選ぶことができるこの試合。岩谷君のポジションはセンターですが、この試合にかける同僚の思いに寄り添い、同じ背番号6のユニフォームに袖を通します。

遊学館高校 岩谷波瑠選手
「絆です。自分も6番にして一緒にいこうと思った。甲子園に2人で出るって言って東京から来たので、それが一番の目標」

遠く離れた石川に息子を送り出した両親もこの試合を見守ります。

髙橋君の母・奈緒子さん
「春は“背番号をもらえなかった、ごめんね”というLINEがきて…それは親に謝ることじゃない、と言いました」
髙橋君の父・和由さん
「ベンチワークでも応援にしても、精いっぱいやることが一番大事。そういう背中を見ていたいので、自分のできる範囲でしっかりやってこいと」

3年間の感謝の思いを電光掲示板に

“最後の夏 悔いなく”

この試合は選手から親に向けて、感謝のメッセージが電光掲示板に映し出されます。

「1番ショート髙橋君」(場内アナウンス)
場内アナウンスを受け、打席に入ります。

第一打席はセンターフライ。続く第二打席も、鋭い当たりながらセンターライナーに倒れます。アピールとなる一打が欲しい場面、最後の打席に全てをかけます。

遊学館高校 髙橋祥太選手
「両親・仲間全員に恩返しができるように、ここでアピールして(メンバーに)入りたい」「ここまで野球を続けてこれたのも両親のおかげ。絶対に恩返ししたいという思いでいっぱいだった」

フルカウントからの6球目。

…結果は空振り三振。ヒットこそ出ませんでしたが、3年間ともに汗を流した仲間と野球ができる時間を噛み締めました。

試合後に髙橋君を迎える両親


試合後、出迎えた両親の姿を見て笑みがこぼれます。

遊学館高校 髙橋祥太選手
「悔しい部分はあるんですけど、しっかり最後まで笑顔でプレーできたので悔いはない。出し切りました」

髙橋君の母・奈緒子さん
「納得してできたのであれば、石川まで送り出した意味があったのかな」
髙橋君の父・和由さん
「持っている力全てをたぶん出し切ったと思う、それぞれのプレーで。全力でやった姿を見れたのできょうはよかった」

選手も保護者もそれぞれが特別な思いを持って臨んだこの試合。かけがえのない高校3年間の集大成へ。ベンチ入りメンバーの発表を控える中、髙橋君はグラウンドで白球を追い続けます。