迫られる「命の選択」

少しでも生存率を上げるため、早く次の手を打ちたい―。

両親が希望したのは、「さい帯血移植」という治療法でした。

妊娠中の母と子を結ぶさい帯と胎盤の中にある、赤血球などの元になる造血幹細胞が含まれた血液「さい帯血」をドナーから提供してもらい、幸之助君に移植します。

現在は神経芽腫の標準的な治療とされていないため、有効性の結論は出ていません。それでも両親は、生存率が上がる可能性に望みを託していました。

ところが、幸之助君は、わずか数%の確率とされる肺の合併症を発症してしまいました。肺が炎症を起こして硬くなり、血液が流れにくいという重い症状です。

このままさい帯血移植を行えば、命に関わる肺炎にかかる恐れがあるため、肺の回復を優先し半年間移植を待ちました。

しかし、肺の激しい損傷が戻ることはありませんでした。病院側からは、幸之助君の身体が移植に耐えられない可能性があり、極めてリスクが高いと伝えられたと言います。

(瑠衣さん)「(移植を)やらなかったら、生存率も低いし、ずっと悩んでいるけど、ずっと答えが出ない。」「どの治療を選択しても、再発するかどうか分からないから。どちらを選んでも悪くなれば後悔するやろうし難しい。私らの決定に幸之助の命がかかっている。」

選択した治療が、幸之助君の命を脅かす副作用を引き起こすかもしれない。一方で、何か手を打たなければ生存率が上がらない―

幸之助君の両親は「命の選択」を迫られ続けていました。

結局「さい帯血移植」は断念しました。「全体の半数以上が再発し、再発すれば5年生存率は約10%」

改めて突きつけられる厳しい現実―

両親はその後も再発リスクを下げるための治療を模索しました。しかし、国内には幸之助君が受けられる治療が見つかりませんでした。