豊かな自然を生かした脱炭素社会の実現に取り組む高知県梼原町。国の「脱炭素先行地域」に選定されてから2年半、木質バイオマス発電などによる脱炭素化の事業が、本格的にスタートしました。

雲の上のまち、梼原町。四国カルストに建つ大きな風車は、町のシンボルです。
梼原町の環境への取り組みは、1999年、この場所に風力発電所を設置したことからスタートしました。風車が生み出すクリーンなエネルギーは売電され、その利益を森林の整備や町民が自宅に太陽光発電を設置する際の補助金として活用。また、川の高低差を利用して小水力発電で電気を生み出し、学校や町内の街路灯に使用しています。

2009年には環境モデル都市に認定され、“再生可能エネルギーの自給率100%“を目指してきました。梼原町の強みは、なんといっても「豊かな自然」です。県の面積の84%を森林が占める高知県の森林率は日本一。梼原町はそれを上回る91%です。

この森を守り、育て、生かしていくことで、脱炭素社会の実現を目指しています。2022年4月、梼原町は、環境省から「脱炭素先行地域」に選定されました。

(高知県梼原町 吉田尚人 町長)
「『自由は土佐の山間より出づ』という言葉があります。『脱炭素は土佐の山間より出づ』。同じような地域課題を抱えているところの参考になるようにしっかりと取り組んでまいります」

脱炭素社会の実現のために町が進めている事業はこうです。町内にある工場で生産している「木質ペレット」。豊かな森林から生まれるこのペレットは、現在、ストーブなどの燃料として利用されていますが、このペレットを使って発電し、その電気をまちに供給します。

隈研吾さんが建築した「雲の上のギャラリー」がある太郎川(たろうがわ)地区に、新たに木質バイオマス発電所を建設。ここで発電する電気と、四国カルストの風力発電や町内の小水力発電、太陽光発電を合わせて町内の公共施設やホテルなどに送ります。それと同時に、発電の際に発生する熱を、ホテルやプールなどで活用します。

発電所からペレット工場までは自営の送電線で結び、自然の力から生まれる再生可能エネルギーが町内を循環する仕組みです。

マネジメントを行うのは、2024年2月に誕生した新しい会社「ゆすはらエネルギー」。再生可能エネルギーを通じて、林業の活性化や地域の雇用創出にもつなげたい考えです。

(ゆすはらエネルギー 代表 西村新一 副町長)
「エネルギーといえば電気ということもあるが人のエネルギー、町のエネルギーと考えれば元気、活力も含めて相対的に町が元気になるような会社にしていきたいと思っています」

これらの事業費の総額は30億5800万円。7月の臨時議会で予算案が否決されたことから事業費を見直し、木質バイオマス発電所に設置する蓄電池の出力を落とすなどして当初の計画から1億1000万円を削減しました。国の交付金を活用するため、町の実質的な負担は4億1700万円です。

「先行地域」に選定されてから2年半。11月8日、ようやく事業がスタートを切りました。

(梼原町 吉田尚人 町長)
「森を生かして、住民のみなさんの暮らしを支えながら、それが今の人類の課題である脱炭素に貢献できる第一歩が踏み出せたことを非常にうれしく思っております。この事業は住民のみなさん一緒になって町全体で取り組んでいく必要がありますので、しっかりと情報を共有しながらみなさんとともに進めていきたいと考えております」

木質バイオマス発電などの稼働は。2026年春ごろの開始を目指しているということです。