「お前が可愛いから」見えてきたのは「歪んだ『愛情』」「支配」

家庭内という閉鎖環境で繰り返された性被害だが、被害者となった娘も、配偶者も、裁判の中で処罰感情を訴えることは無かった。

今回の事件について、犯罪心理学などに詳しい人間環境大学の藤代富広教授は、その理由について「暴力などに頼らない支配と服従」そして「愛情の誤認」があると指摘する。

「まず、経済的な支配と服従という要素が考えられる」

その上で、藤代教授は「ストックホルム症候群」という言葉を挙げた。

これは、人質などの被害者が、加害者に対して、連帯感や共感、さらには愛情を抱いてしまう心理的な現象を指す。

そこには、極限の状況下で生き延びるために、抵抗することを諦め、半ば無意識的に従順にふるまってしまう、いわば生存するための本能が影響しているともいわれている。

また、親子関係にある場合、その被害は潜在化しがちだという。