100分の1ミリの精度! 木型を作るプロフェッショナル

一方、愛知県みよし市にある明知工場では『鉛筆削り』に打ち込む人がいました。剣持正光さん(64)です。鉛筆削りは木を正確に削る感覚を常に養うために必要不可欠です。自動車に木が使われることはほぼありませんが、なぜ、木を正確に削る感覚が必要なのでしょうか。
(シニアエキスパート 剣持正光さん)
「大工は家を造ればそれが製品になるが、われわれは『型』を作っても商売にならない。これを使った素材ができた時に、初めて商売が成り立つ」
剣持さんが見せてくれたのは、昔のエンジン部品。エンジンはまず、木から削り出して各部品の正確な「型」を作ります。木型を砂の中に埋め込み、取り外した空洞部分に溶けた金属を流し込んで部品を作るのです。
(シニアエキスパート 剣持正光さん)
「これでも1つ、2つ、3つ、4つ…(重ねている)。4つで『コンマ1』狂っていたら、『コンマ4』狂うことになっちゃう。部品を全て作るときには、プラスマイナス100分の3とかで作り上げる」
自動車の心臓であるエンジンに要求される精度は、100分の1ミリ。流し込んだ鉄やアルミが固まる時にわずかに縮むことまで計算し、木型を手作業で削り出す必要があります。
(シニアエキスパート 剣持正光さん)
「作ったからすぐ製品になるかというと、相当先の話。型というのは、なかなか理解できない世界」