あまりに淋しい竜の内野陣

今回のファン投票の中間発表をチェックしながら淋しかったことは、そこに登場するドラゴンズ選手の名前が、あまりに少ないことだった。

結果として捕手部門こそトップを取ったものの、抑え、二塁手、三塁手、遊撃手の4つの部門では、上位5人の中にドラゴンズの選手は誰も入っていない。

一塁手部門でビシエド選手が3位、外野手部門で大島洋平選手が6位である。

ファン投票には、贔屓チームの選手に投票する「基礎票」に加えて、野球ファンが全体の中から“公平に判断して”投票する「浮動票」がある。

この投票結果は、抑え部門以外で、ドラゴンズの現状の課題を浮き彫りにしていると言える。

内野陣が固まっていない。

そして、そこに全国区のスター選手がいない。

もし石川昂弥選手がけがをしていなかったら、もし根尾昂選手がショートのレギュラーに名乗りをあげていたら、“ないものねだり”と分かっていても、つい思ってしまう。

球宴史に刻まれるドラゴンズ戦士

「サンデードラゴンズ」より 荒木雅博氏©CBCテレビ


ドラゴンズの選手は、過去のオールスターゲームで、これまで10人が最優秀選手(MVP)に選ばれてきた、最初の球宴が開催された1951年(昭和26年)には野口明選手と杉下茂投手が獲得している。

1970年前後に“竜の4番”だった江藤慎一選手にいたっては、2回もMVPを獲得した。

最も記憶に新しいのは、現在1塁コーチをつとめる荒木雅博選手(当時)。

2008年(平成20年)に3安打3打点でMVPに選ばれた。

数々の華やかな活躍を“夢の球宴”で見せてきた竜の先輩たちに負けないよう、出場する4選手は、是非チーム史上11人目のMVPをめざしてほしい。

球宴に出場しない選手がやることはひとつ、後半戦への準備である。

すでにペナントレースは折り返し点を大きく過ぎている。

シーズンの残された時間は、あっという間に過ぎていく。

今回のファン投票で浮き彫りになった内野陣の強化と整備、これなくして“立浪竜の逆襲”はない。

対象である選手たちは、心して調整に励んでほしい。

その練習は“夢の球宴”と真逆の、とんでもなく厳しいものであっていい。                              

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

著者プロフィール:北辻 利寿(きたつじ としなが)
1959年中日球場(現ナゴヤ球場)近くの名古屋市中川区生まれ。中日ドラゴンズへの限りなき愛を胸にCBC(中部日本放送)に入社。JNNウィーン特派員、報道部長、報道局長、論説室長などを経て現職。中日ドラゴンズ検定1級・2級・3級合格認定者。
著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ゆいぽおと)など。