「現場だけではどうしようもない世界がある」3強との差を埋めるために
一方で、その「基準」を残したうえで、橋川監督は現実も見つめていた。
INAC神戸レオネッサ、日テレ・東京ヴェルディベレーザ、三菱重工浦和レッズレディース。WEリーグで上位を争う3強との差を、どう埋めていくのか。
橋川監督はまず、現場の責任を口にした。預かった選手を成長させること。若手を台頭させること。日々のトレーニングの中で、選手一人ひとりの力を引き上げていくこと。
そのうえで、こう続けた。
「正直なところ、現場だけではどうしようもない世界があります、この世界は」

橋川監督が挙げたのは、強化・編成のあり方だった。
新卒選手のリクルーティング、シーズン途中の補強、長期的なビジョンを持ったクラブ作り。上位クラブが戦力を整えていく現実に触れながら、アルビレックス新潟レディースにもクラブ全体の戦略が必要だと語った。
「本当にこのクラブが3強を目指すんだったら、敢えて言わせていただくと、そこのところをどうするか」
厳しい言葉にも聞こえる。
しかし、それはクラブを突き放すものではなかった。
「預かった選手たちの『5』の力を『6』や『7』や『8』にする」
タイトルを争うチームの力を「10」とするなら、現場だけで届かせるには限界がある。
だからこそ、強化編成、クラブ運営、マーケティング、ブランディングまで含めた総合力が問われる。

「クラブ、強化編成、そして我々現場のところが、三位一体がちゃんと揃わない限りは、やっぱりタイトルは難しくなってきていると思います」
残した「基準」をさらに押し上げるためには、ピッチの中だけでは足りない。
退任する監督が最後に残したのは、クラブへの宿題でもあった。










