8月4日に青森県五所川原市で開幕する五所川原立佞武多祭り(ごしょがわら・たちねぷたまつり)。今年は持続可能な社会を目指す「SDGs」を打ち出した立佞武多が出陣します。立佞武多の紙には捨てるはずの繊維を原料にした再生紙が使われています。環境に配慮しながら伝統文化を守る挑戦を取材しました。


3年ぶりの五所川原立佞武多祭りへ。この日、台上げされたのがSDGs立佞武多「牛若丸」です。制作に使った紙の原料となったのは、コットン100%のシャツを作る際に出た生地のあまりでした。この熊本県の製造工場ではシャツ1枚を作るのに生地全体のおよそ14%が捨てられていました。その生地から繊維を取り出し紙として再生しています。


このプロジェクトを計画したのが東京の一般社団法人サーキュラーコットンファクトリーです。繊維の再生紙を普及するために様々な活動をしていて、今回初めて祭りへの導入に取り組みました。

サーキュラーコットンファクトリー 渡邊智惠子 代表理事



※サーキュラーコットンファクトリー 渡邊智惠子 代表理事
「みんなが持っている洋服から紙ができる。捨ててはだめとなる。ごみをいかに少なくするかが私たちの知恵だし、22世紀にきれいな地球を子供たちに残していけるかになる」

初めてのSDGs立佞武多、手がけることになったのが五所川原市の制作者・福士裕朗(ふくし・ひろあき)さんでした。

※立佞武多制作者 福士裕朗さん
「衣服で紙を作るのが、自分自身でも想像できなかった。もし佞武多の紙を衣服でできた紙ですとやれば、世界中に発信できる」

立佞武多制作者 福士裕朗さん




課題となったのは、再生紙が立佞武多の制作に使えるほどの品質を兼ね備えているかでした。福士さんが普段使っている紙は、合成繊維をすきこんだ上で特殊な薬品を使って破けにくくしています。



繊維の再生紙は、強度を上げるために特殊な加工をして製造されました。そのサンプルの品質を確かめます。一定の強度はあり、使えるレベルであることが確認され、次は祭りで運行中に雨が降ったときに溶けないか耐水性をテストしていきます。

※立佞武多制作者 福士裕朗さん「意外といけるね。いいかもしれない」


品質確認をクリアし、高知県で再生紙の製造が始まりました。まずはシャツのあまりを細かく裁断します。このあと、繊維を1本ずつにほぐしていよいよ漉き始めます。立佞武多用にはシャツのあまり14キロから和紙が幅90センチ、長さ100メートル作られました。

再生紙の製造 (高知県)


※モリシカ 井上純人 代表
「僕らの感覚では十分だと思うけど、佞武多用はどこまでかがわからないので。それでも十分ではないかと思います」

漉きあがった紙は7月中旬から骨組みに貼られ、制作は山場を迎えます。墨で身体の輪郭を描いてから色を付けていくこの作業、再生紙の耐水性が低ければ途中で溶けて穴が開いてしまいますが、テスト通り順調に進み、福士さんが想像した以上の仕上がりになりました。



※立佞武多制作者 福士裕朗さん
「払いとかもでる。想像していた以上に、現行の紙と比べてほぼいい。むしろ、筆の走りという点からは、こっちの方がいい」

紙と光の芸術とも称される青森の伝統文化を繊維の再生紙が見事に彩りました。

※立佞武多制作者 福士裕朗さん
「これで限界と思った先に、服で紙を作るという新たな発見をした制作でした。今後も、これで止まることなく新たな材料で地球の環境と共存共栄しながら祭りを続けていく」



SDGs立佞武多は、環境に配慮しながら伝統文化を継承するという新たな可能性を切り拓こうとしています。

この夏出陣するSDGs立佞武多