母の言葉ヒントに新たな道へ
決して楽ではない山の仕事。力もいる大変な作業をなぜビジネスにしたのでしょうか?東谷さんは高校卒業後、就職し事務職として働いていましたが、心の病のため、休職しました。そのとき、自営業を営む母・和恵さんから聞いたことが新しい道へのヒントになりました。

東谷さん
「SDGsとか環境にいいことのビジネス、社会の課題を解決するビジネスというのが今来てるらしいと聞いて」
荒れた山「見て見ぬふりはできない」
「社会問題をビジネスで解決する」このアイデアを聞いて思い浮かべたのが、地域の荒れ果てた山でした。幼いころから、近くの山に家族でタケノコ掘りに行くなど、竹林を身近に感じていた東谷さん。竹がはびこり、荒れた山の現状を見て見ぬふりはできないと強く思いました。
東谷さん
「社会で課題になっている問題視されていて困っている、その現状を解決しつつ利益を生んでいけるっていう形じゃないですか、それがめっちゃいいじゃん、そういうのやりたいと思って」
思い立つとすぐに退職を決め、県の創業補助金制度を活用し去年10月に会社を設立しました。

母・武内和恵さん
「言いだしっぺは私なんですけど意外にもすごい乗り気になって本当に楽しんでやってくれているので。家の中でとかオフィスの中でとかそれももちろん大事なことなんですけれどやっぱり山に行って体使って。バランスをとりながらやっていける仕事っていうのが本当に楽しいな嬉しいなと思います」
母からのヒントをしっかり受け止め、経営面でもアドバイスを受けながら目を輝かせて、挑戦しています。
伐採を無償で請け負い商品化
東谷さん
「竹は1日に1メートル以上も伸びたことがあるらしいです」
奥野アナ
「1日に1メートルですか?!」
成長が早く、山を覆いつくす勢いの竹。しかし根は地下30センチほどまでと浅いため、土の流出を防ぐ力が弱く、放っておくと土砂災害の危険性が高まります。定期的に山に入り竹を伐採する必要があります。「たけふぁむ」では伐採をなんと無償で請け負っています。
東谷さん
「無償でやらないと、きれいにしようと思わないよねってなって、無償でやるけど切った竹を原材料にしていろいろ商品とかにできたらめっちゃいいじゃんっていう」
かきいかだ材料や粉砕してパウダーに
無償で伐採する代わりに、切った竹は、広島県の業者に卸しています。冬の味覚「かき」を育てるかきいかだの材料になるそうです。粉砕する新たな活用方法も考えました。枯れた竹や細かい竹を粉砕機にかけて作った「竹パウダー」を今月から市内の園芸店で販売する予定です。

竹パウダーは土に混ぜたり表面にまいたりすると、肥料の分解が促進され植物が栄養分を吸収しやすくなる効果があるそうです。ただ、今のところ利益となる収入はわずか。人件費を考えるとマイナスの状態です。それでも先を見据え、山に価値を感じられる仕組みを生み出そうと奮闘しています。
東谷さん
「なんか楽しいですよね、やっぱり新しいことを始めるっていうのは赤ちゃんみたいなもんです。歩けたらわ~いって喜ぶ、走れたらわ~いって喜ぶみたいなああいう感じでいちいち喜んでいけたら楽しいと思うので私も楽しんでやっていかないと、とは思うんですけどね」
ただ、「人手不足」は否めません。森林組合で働いた経験のある男性従業員1人のほか、両親が手伝っていますが、作業が追いつかないのが現状です。