最強の盾 イージスを独占取材

2017年、北朝鮮との軍事的な緊張が高まる中、 朝鮮半島を目指すアメリカの航空母艦「カールビンソン」。

空母は潜水艦や偵察機で周辺を捜索、 上空からは偵察衛星で監視し、 半径300キロの制海権を完全に掌握しながら動く。

護衛の“要”は防空能力が高いイージス艦だ。イージスの名前はギリシャ神話に由来する。都市の守護神アテナが持つ武器が、万能の盾イージスだ。

日本が保有するイージス艦は現在8隻。空母の本格的な運用のために増強する計画もある。

長期間、北朝鮮の弾道ミサイルへの警戒を終え、横須賀に帰港したばかりのイージス艦「きりしま」にカメラが入った。

畳8枚の面積のスパイレーダー。イージス艦の眼だ。半径500キロ以上。どの角度の飛行物体も瞬時に捉える。垂直発射ミサイル90発を搭載、20近い目標への同時攻撃が可能だ。速射砲は1分間に40発を発射出来る。

担当者
「射程は23キロ、東京ー横浜間ぐらい。あたります」

日本初のイージス艦の艦長を務めた本多宏隆氏。初めて乗ったイージス艦の能力には驚かされたと言う。

初代イージス艦艦長 本多宏隆氏
「(図上演習で戦闘機が)高度を下げて突っ込んでくる。キル(撃墜)キル、キルと全部墜とした。鉄砲の弾が飛んでいるのが(レーダーに)映る。関門海峡を出ると朝鮮半島の上空の飛行機が全部わかる」

イージス艦は1隻1500億円。年間の維持費は100億円を超える。弾道ミサイルを迎撃するSM3は1発50億円とも言われる。

イージスシステムはメンテナンスを含めて全てアメリカに依存している。

古庄幸一 元海上幕僚長
「アメリカから買って、一番大事なところだけアメリカでやってる訳です。日本にオープンできない部分が未だにある。それくらい相当な予算が必要」

限られた乗組員しか入れないCIC・戦闘指揮所。 訓練は毎日繰り返し行われる。

CIC担当乗組員
「12~13人、1チームでローテーションを組んで、常に日本海を見ています」

イージス艦は日米同盟に基づく“秘密の塊”だ。

CIC担当乗組員
「自分の普段の行動や発言でも情報に繋がるのでかなり気を付けている。イージスシステムは日本だけの秘密ではない。気を遣っている」

攻撃を受けた際に被害を最小限に抑えるシステムもある。

乗組員
「イージス艦独特のゾーンディフェンス。4ゾーンに区切られていて、1ゾーンで被害があったら、1ゾーンだけで(被害を)食い止める」

最強の護衛艦と言われるが、全く歯が立たないものある。

記者
「コロナのような感染症があった時は対処できる?」

乗組員
「一時的に止めることはできるが、通風が各区画に通っているので(ウイルスが広がる)」

艦船の天敵、潜水艦に対する能力も高い。

記者
「イージス艦は魚雷も持っている?」

担当者
「はい、能力は高い。(射程)距離は言えないが、潜水艦を沈めることができるくらいの能力」

北朝鮮の弾道ミサイル発射は予測できない。 洋上でひたすら待機する。

乗組員
「いつ撃ってくるか緊張感がある。ベッドに入っているときも」

艦内で唯一の個室は艦長室だ。

イージス艦きりしま 石寺隆彦艦長
「例えば100回撃って100回日本に落ちなかった。でも101回目はわからない。いつでも撃破できるように毎日訓練している」

1998年、日本の安全保障関係者を震撼させる事件が起きた。北朝鮮のミサイルが日本列島を飛び越えて三陸沖に達したのだ。事件は極秘にされた。

初代イージス艦艦長 本多宏隆氏
「日本の上空を通過したので大変だなと。1、2年遅れて発表されたと思う」

ミサイルの航跡を捉えたのはイージス艦「みょうこう」だった。しかし…

防衛省幹部
「航跡のデータは内調(内閣情報調査室)に押さえられました。防衛省は全く手を付けていません。内調からCIAを経て最終的にアメリカ軍に渡されたと聞いています」

データはそのままアメリカ側に渡され、日本政府は蚊帳の外だった。この事件を契機に アメリカが北朝鮮のミサイルに危機感を持つ事になった。

反撃能力の強化は今、“空母保有”にとどまらず、予想を上回るスピードで日本列島全土に広がっている。