今回はネット上の誹謗中傷トラブルに悩む人のための情報共有サイト「TOMARIGI」(トマリギ)を紹介します。インスタグラムやX(旧Twitter)などのSNSやブログなどで、自分の書いた内容に対して、いわれのない批判やひどい言葉を返された経験のある人もいると思います。「誹謗中傷」などと呼ばれるこれらの行為は、人の心を傷つけ、時には健康にも悪影響を及ぼします。
誹謗中傷の悩みを抱える人に寄り添うサイト
これまで、SNSでの誹謗中傷に苦しんだ人が自ら命を断ってしまうという不幸な事件もありました。そうしたことは今後、あってはならないと思います。ですが、誹謗中傷を受けたと感じた時、誰に、どのように相談すればいいか分からず、苦しみを自分ひとりで抱え込んでしまう人も多いと思います。鎌倉市でコンテンツ事業を展開する面白法人カヤックが提供するサイト「TOMARIGI」は、被害を受けた時の具体的な対処法や、これまでの裁判の紹介など、見た人が共感し、知識を得て、前向きになれるテキストを掲載しています。このサイトは同じようにネット上で誹謗中傷される経験をした起業家の関口舞さんから提案され、面白法人カヤックと共同でコンテンツを製作し、2022年2月に公開されました。プロデューサーの西植弘さんに、立ち上げの経緯を聞きました。
『TOMARIGI』プロデューサー・西植弘さん
「苦しむ人が分かりやすいウェブサイトがあれば、きっと救いになるんじゃないかというのが発端になっていて、弁護士さんに相談することもけっこうハードルが高いですし、どこに相談しようというのも自分で調べなきゃいけなかったり、難しい問題がいろいろあります。そういう悩みで苦しむ人が分かりやすいウェブサイトがあれば、きっと救いになるんじゃないかというのがあって、そうした社会的に意義のあるウェブサイトを立ち上げてみようというのが発端です。私だけが辛い思いしていないんだ、こういうことが実際に裁判事例としてあるんだということを理解してもらえるようにサイトを作りました。直接的なソリューションとしては弱いですけど、こういうやり方がありますよ、というのを発信している形になります」
西植さんが言うように、SNSを利用している個人が、ある日、トラブルになっていきなり弁護士に相談するのは、手続きや料金などに不安があって難しいと思います。「TOMARIGI」は、直接、弁護士やカウンセラーなどを紹介するのではなく、同じようなトラブルを経験した人の体験談や、対策例を掲示板のように紹介するサイトです。SNSやブログでは匿名やアカウントネームで書いていて、誰かに相談するときに実名を名乗りにくいと感じたり、批判的なコメントを書かれるのは元の書き込みに原因があるのでは?と自分を責めて苦しんでしまうなど、第三者に積極的に相談しづらい問題もあるそうです。

「TOMARIGI」の特徴は、そうした様々なつらさを抱える人たちに、友達からの助言のように寄り添うサイトになっていることです。たとえば「みんなの体験談広場」には「SNSで誰もいいねを押してくれない」という孤独感や、「自分が投稿すると自慢話をしていると受け止められるんじゃないか」などSNSを通した様々な不安、悩みの体験談が読めます。ネット上でつらい経験をした人の様々なメッセージを見ると、悩んでいるのは自分だけでないと知ることができ、気持ちがひとつ整理できます。

「トラブル対処法」のコーナーでは、最初に、「(酷いコメントは)無視する」というアドバイスが出ていて、気にしないこともひとつの対処法だと気づきます。