能登半島地震で被災した人たちの多くが厳しい避難生活を送っています。ライフライン、中でも「水」の確保が深刻な課題となっている中、発災直後から自社の浄水装置を使って現地で給水支援にあたった男性が、被災地の現状を語りました。

(アクアデザインシステム 武田良輔 社長)
「命をつなぐ水を届けるためにできるだけ早く現地に向かって活動したかったという思い」

こう話すのは能登半島地震発生後、8日間に渡って被災地で給水支援をした高知市のアクアデザインシステムの武田良輔(たけだ・りょうすけ)社長です。アクアデザインシステムは災害に対応する浄水装置の開発・製造を行っていて、武田(たけだ)さんはこれまでにも、西日本豪雨や熊本地震などの被災地で給水支援をしてきました。

元日の能登半島地震発生後、武田さんは、登録する国際的に活動するNGOからの連絡を受け、浄水装置やタンクなど必要な機材を準備して、今月3日に高知を出発。目的地に近づくにつれ被災地の深刻な状況を目の当たりにしました。

(アクアデザインシステム 武田良輔 社長)
「津波被害があったところを車で通ったんですけれども、家、車が流されて、めちゃくちゃな状況でした。地震による家の倒壊もひどくて、電柱が倒れていたりとか、電線が垂れ下がっていたり、今まで経験した災害現場で、過去一番ひどい状況というのをすごく感じました」

4日の午後、珠洲市の、避難所となっている中学校に到着。自衛隊の給水車が活動していましたが、被災した人たちは、生きるために必要な水の利用を制限せざるを得ない状況でした。武田さんは、近くの砂防ダムに溜まった水を使って1時間に720リットルの飲み水を作ることができる浄水装置を設置させました。

(アクアデザインシステム 武田良輔 社長)
「水が全くない状況だったので、避難所の中学校の校長先生もはじめ、皆さんが『ぜひやってくれ』ということで、すぐ給水活動にうつった。避難所には約300人から350人の避難者がいて、その人たちの飲み水、顔を洗う生活水、洗濯水、トイレ水などすべて供給したので、避難者の人たちは、水で苦労することはまずなかったと思う」

さらに武田さんは珠洲市のホームページやSNSで、この避難所にいない人たちに向けても、飲み水や生活用水が手に入ることを発信。その中で感じたのは自宅で生活する人たちの苦労でした。

(アクアデザインシステム 武田良輔 社長)
「車で遠くから水を取りに来る人が多くいました。電気は通っているけれど、水がないから、飲み水もないし、生活する水もないし、、洗濯もできない、風呂も入れないということで、車で来た人は200リットル、300リットルくらい生活水を持って帰る人もいました。避難所ももちろん大変なんですけれども、自宅で避難する人たちもすごく大変な思いをしている」

「もう水を取りに来る人たちがすごく感謝して『ありがとう』『本当に遠くから来てくれてありがとう』と言ってもらいながら、(被災地の)皆さんが大変な思いをしているんですけれども、そういう思いですごく感謝をされました。差し入れをしてくれたり寒い中、活動をしてたら暖房器具を持ってきてくれたりとか、すごく温かい対応をしてくれた」

能登半島地震の被害、そして、避難生活の過酷さを自らの目で見た武田さん。南海トラフ地震に置き換えて考えたとき、行政や他県からのサポートはさらに難しいため、「私たち自身が自ら備える必要性がある」と訴えました。

(アクアデザインシステム 武田良輔 社長)
「南海トラフ地震のように広範囲で起こった際には、他県からのサポートは望めないと思う。特に高知県は一つ道が寸断されると、行けない場所がたくさんあります。そういうところは、自分たちで何かできる対策・準備は十分しながら、どうやって生き延びていけるのかっていうトレーニングも重要だと思うので自分たちで何とかできる態勢というものを日ごろから考えて日ごろから備えて、人に頼らない災害避難所生活を考えていくべき」

取材をした武田さんは再び支援活動を行うということで今週、さらに2台の浄水装置を現地に送り、今月末まで被災地で浄水装置のメンテナンスや使い方のレクチャーといった活動にあたるということです。