羽田空港の滑走路で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突した事故。国土交通省によりますと、事故の原因につながる管制とのやりとりは、「現在確認中」としています。
元日本航空パイロットで航空評論家の小林宏之さんは現時点で判明している情報をもとに管制塔と海保機とのコミュニケーションに問題があった可能性を指摘しました。
JAL機が着陸するC滑走路の末端に海上保安庁の飛行機が
ーー事故原因はまだ明確に判明していませんが、映像やこれまでの情報などからどのような事が考えられるか
(航空評論家・小林宏之さん)
国土交通省・海上保安庁の会見や映像から、JAL機が着陸するC滑走路の末端に海上保安庁の飛行機がいて、それと接触した可能性が考えられる。
なぜ、着陸する滑走路に海上保安庁の飛行機がいたのか。基本的には滑走路には一機しか入ってはいけない。それが着陸する滑走路に既にいたというのは、今後の運輸安全委員会の事故調査を待たなければいけないが、現時点では管制官から海保への指示が間違ったか、海保機のパイロットが聞き間違えたか。通常滑走路に2機入ってはいけないなかで2機が遭遇してしまった。それが事故の発端になったのではないか。
どうしてもヒューマンエラーが入りやすい
ーー管制塔の指示は適切だったか
普通は間違えない。パイロットも管制官も確認をしている。航空システムは技術が進んでいるが、管制官とパイロットのコミュニケーションは昔と変わっていない。特に空港周辺では、人間が口でしゃべって、電波を通して耳で聞くためどうしてもヒューマンエラーが入りやすい。
そのため、パイロットと管制官はコンファーム=お互いに確認できていたかどうか。今後の調査の一つのポイントになるのではないか。
ーーなぜいまだにアナログ?
洋上になると比較的余裕があるので、いわゆるメールのようなものでやりとりしているが、空港周辺になると文字を入力して、読み取るというのは時間がかかる。そうなると、どうしても人間が話して、耳で聞くという方法にせざるをえない。
滑走路は「最低限2分の余裕」
航空管制というのは、安全の確保と円滑な交通の流れが大きな目的。特に羽田は日本でも過密なスケジュールの空港、空港周辺では未だに人間の口で話して、電波を通じて耳で聞かざるを得ない。
ーー1本の滑走路で、どのくらいの頻度で離着陸がおこなわれている?
通常最低限2分とる。余裕があるときは3、4分。今日の事故の時間帯は夕方5時台だったので、ラッシュアワーではあった。かなり過密スケジュールの可能性はあると思う。ただ、忙しいから、頻度が多いからっていうのは理由にならない
ーー離着陸の際で危険な状況はあるものなのか
安全のマージンは少なくなる。やはりパイロットは目で見る、耳で聞いて、危険な状態は回避するので、どの空港でも安全のマージンは少なくなるのは確か。パイロットも管制官も緊張して、集中力を発揮して毎日運行している。
ーー安全確認できず、接触した可能性があるとのことだが、旅客機が着陸態勢に入った時にコックピットから滑走路の状況は目視可能か
もちろん目視はできる。当然パイロットは計器を見て、外の景色も目視する。特に着陸寸前には目視する。状況よければ他の飛行機も見えるが、今日の場合は夜で視界に入らなかった可能性はある。