「プーチンは“ウクライナが独立していることが気に入らない”」
兵力でも火力でも5分の1以下のウクライナが戦えるのは、西側の支援と“祖国を守る”という国民の士気の高さだ。だが反転攻勢の成果が出ず、東部ではロシア軍が夥しい被害を出しながらもじりじりと迫ってくる。すると西側から「莫大な支援しても成果がないじゃないか」という不満が募り、支援が先細る可能性も考えられる。そして、ウクライナ人の士気にかかわる不安な調査結果があった。
ウクライナの独立系調査機関『レイティング』が11月に行った世論調査で「交渉による戦争終結を望む」と答えた人が今年2月には35%だったのに対し44%に増えた。さらに別の調査で「領土を諦めても構わない」と答えた人は去年12月には8%だったのに対し、今年12月には19%と大幅に増えた。やはりウクライナ国民の間にも“戦争疲れ”が広まりつつある。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 准教授
「領土の奪還は難しいということが6月以降わかってきた。なのでこういう声が出てくるのもわかる。ただこの人たちに『主権を諦めても構わない?』って聞いても同じ答えかっていうと私はそうは思わない。プーチンは“ウクライナが独立していることが気に入らない”。領土を10%あげたら、25%あげたら満足するかっていうとそうじゃないと思う。キーウにロシアに従順な政府ができる。あるいはウクライナがロシアの一部になっちゃう…、じゃないと満足しない」
「ロシアの言い出す“停戦”は、戦力を立て直すための騙しの期間でしかない」
一方、ニューヨークタイムズは“プーチン大統領、停戦を示唆”と報じた。「ウクライナの東・南部4州の占領地域を維持したうえで停戦に前向きな姿勢を示している」と複数のルートを通じてアメリカに伝えられたという。しかし、秋元氏はこの話を一刀両断する。

英国王立防衛安全保障研究所 秋元千明 日本特別代表
「ロシアの“停戦”だとか“平和協定”は信用してはいけない。戦力を立て直すための騙しの期間でしかない。近年で例を挙げてもシリアでも停戦協定結びましたが、戦線を構築して自分たちの都合のいいタイミングで交戦を再開した。チェチェンでもそうですね…(中略)歴史を見ればわかる。ロシアの停戦協定は相手をだまらせておいて、その間に自分たちの新しい戦力を組み立て、次のフェーズに入るための道具にしている…。ロシアの言い出す停戦は全く信用しない。これ常識」
(BS-TBS『報道1930』12月26日放送より)