12月20日、国が沖縄県に変わり手続きを執行して辺野古の埋め立てを進めようという「代執行」裁判の判決がありました。繰り返された国と県の法廷闘争。そこに見えるのは、民意が置き去りにされてきた苦悩の歴史です。
辺野古埋め立て 「国の代執行」認める判決
辺野古新基地建設をめぐって、大きな節目となる代執行訴訟の判決。
その日、沖縄を包んだ、降りしきる雨と冷たい風の中で、県民は待っていた。
判決は、国の主張を全面的に認め、その受け入れを命じる、沖縄県にとって厳しいものだった。

「沖縄を馬鹿にするなよ!」
名護市辺野古は、オスプレイも離着陸する世界一危険とされる普天間基地の移設先だが、2019年に行われた埋め立ての賛否を問う県民投票で、反対が投票総数の7割を超えた。
▼賛成 19.0%
▼反対 71.7%

計画では、およそ152ヘクタール埋め立てられ、V字滑走路は1800メートルに及ぶ。
その先端部分である大浦湾で、マヨネーズ状と言われる軟弱地盤が見つかり、国は、県に地盤の改良に必要な設計変更を申請。それを沖縄県が承認せず裁判となったが、最高裁で県の敗訴が確定した。
それでもなお承認しない県に代わって、国が承認を執行しようと玉城知事を提訴したのが今回の代執行訴訟だ。
国と沖縄県、双方の主張は真っ向から対立してきた。10月末に行われた口頭弁論の開廷前。

玉城デニー沖縄県知事
「住民の意思に沿って行政を行い、その行政権限を国は奪ってはならない。そう書いてあるのが憲法の地方自治の本旨なんです。それを話し合いもせず、言うことを聞かないから『お前は退いてろ』と言わんばかりに権限を取り上げて、我々の未来を埋め立てようとしている」
支持者
「デニー知事頑張れ!」
そう背中を押されて、知事が入廷した。
代執行訴訟の口頭弁論は、国側から始まった。
国側の主張
「設計変更申請を沖縄県が承認しないのは違法である」
「代執行以外の方法によって是正を図ることが困難であることは明らかである」
「承認しない状態を放置すれば、我が国の安全保障と普天間飛行場の固定化の回避という重要課題に関わるから、著しく公益を害する」
一方、被告である玉城知事が弁論で強調したのは、対話と民意だった。
玉城知事陳述
「対話によって解決を図る方法を放棄して、代執行に至ろうとすることは到底認められません」
「今日に至るまで、国は米軍基地の抜本的な被害軽減のための外交交渉を行わず、
県外移設の選択肢を政治的な理由から排除してきました。基地のもたらす深刻な被害に日常的にさらされながら、このような国の姿勢を見てきたからこそ、沖縄県民は辺野古新基地建設に反対しているのであって、何が沖縄県民の公益かの判断は、国が押し付けるものではなく、沖縄県民が示す民意こそが公益とされなければなりません」
裁判は、県側の弁論の後、あっけなく閉廷。即日結審した。
行政官として最高裁判決に従うべきか、辺野古反対の民意を背負った政治家としてあるべきか。玉城知事は、そのはざまで苦悩したという。
沖縄大学名誉教授の仲地博さんは、その苦悩と沖縄の主張の意味をこう話す。

仲地名誉教授
「法治国家であれば最高裁の判断に従うべきだというが、法治国家はもちろん大事です。しかし憲法はもう一つの価値を保障している。わざわざ一章を設けて地方自治の保障を規定した。地方自治を実践する地としての沖縄が、現代の日本における沖縄の価値なんだろうと思います」