辺野古埋め立て 民意と公益
「国による代執行を許さない」「沖縄を再び戦場にさせない」。辺野古問題のみならず、南西諸島の軍備増強に危機感を抱く沖縄では、県民集会が相次いでいる。
大浦湾のすぐそばに暮らす渡具知武清さん。声を上げ続ける意義をこう話す。

渡具知武清さん
「まだまだ足りないっていうのが元にあるんだけど、力不足もあるし、一人じゃどうしようもできないから一緒に頑張ろうねと団結もできるし」

渡具知さんは、2004年から毎週土曜日にキャンドルを灯して、辺野古の基地のゲート前に家族で立ってきた。きれいな海を守りたい、その一心で始めた小さな抵抗だった。
当初2300億円とされた総工費予算は、現在9300億円。すでにその半分近くが使われ、さらに費用が膨らむ可能性が指摘されていることに、妻・智佳子さんは憤る。

渡具知智佳子さん
「もっと他にいい方法があるんじゃないのっていうのに耳も貸さないで、ここが唯一って言って、どんどんみんなの税金をつっこんでいくっていうのは、日本の政治って何かなと思います」
そして、今後、代執行が他の地域でも起きる可能性を危惧する。

渡具知武清さん
「何も手出しするなということですからね。沖縄はこれがまず初めてだから、問題ができるとこういうことで全部決着をつけるというか。何のための民主主義か」
許田正儀さん
「沖縄だから代執行っていう言葉自体が出てくるのかなって思ってね」
辺野古に暮らす許田正儀さんは、かつて移設を容認していた。だが、いま、少数を切り捨てる民主主義に疑問を抱いている。
許田正儀さん
「(沖縄は)日本の国民の中でわずか1%ですよ。100万人余りの県と1億2千万の日本国民にね、わずか1%の民主主義では覆せない。だけど、意思っていうのは尊重してもいいじゃないかと思います」
スーパーを経営し、自らを保守的な立場だと言う許田さん。
アメリカ兵らとも交流を持ち、ベトナム戦争時からキャンプシュワブの恩恵を受けてきたと話す。気持ちは揺れ続けたが、いま、長い混迷と政府の姿勢によって、心が定まった思いでいる。

許田正儀さん
「代替施設が出来て、騒音に悩まされて環境的に住めない地域になってしまうとね、みんなで頑張ればなんとかなれたのかなって、そういうことをふと考えますよ。自分のことはもうどうでもいい。孫たちのことを考えるとね、どんな環境の辺野古になってるんだろうと思いますよ」
渡具知さん一家は、いまも毎週末、キャンドルを灯して基地の前に立つ。
活動を始めた時、長女の和紀さんは2歳だった。

長女・和紀さん
「ブーイングされたこともあるんですけど、沖縄の未来を守ることに何の間違いがあるんですかっていうのは自分にも言い聞かせてるし、大浦湾に住んでる絶滅危惧種も含めて2000種類以上の生物たちの命を守ることもちゃんと含めて、それが“命どぅ宝”(命こそ宝)じゃないかなって」
繰り返された国と県の法廷闘争に思う。
長女・和紀さん
「根本的なところから、ちゃんと話し合っていくべきじゃないかっていう。私たち人間はそこを忘れているんじゃないか」
そして、12月20日、判決の日―。
判決は、国の主張を全面的に認め、沖縄県に対し、25日までに国の設計変更申請を承認するよう命じた。

判決
「被告の承認しないという意思は、明確かつ強固というほかなく、代執行以外の措置で是正をはかることは困難である。被告主張の『対話』は、その方法に当たるとはいえない」「最高裁判決で法令違反との判断を受けた後も、これを放置していることは、それ自体社会公共の利益を害するものといわざるを得ない」
沖縄の民意については…

判決
「歴史的経緯等を踏まえれば、沖縄県民の心情は十分に理解できるところではあるが、法律論としては公益を当然に考慮しうるものとはいい難い」
判決は民意を公益と認めなかった。
年明けにも、この海を埋め立てる工事が始まる。今後、最高裁で県が逆転勝訴しない限り、工事は止まらない。
