”心神耗弱” と判断した理由 (判決より)
被告は祖母に罵られたことを引き金として①②が同時に生じ、衝動的に犯行に及んだ。
① 支配観念
② 怒りなどの情動による『意識野の狭窄した心理状態』
① 支配観念
・被告は急性一過性精神病性障がいに罹患しており、犯行当時『祖母に悪魔が取り憑いている』と感じており、犯行の動機を高めた
・支配観念とは『他の考えが浮かばず、その人の判断や行為に強い影響を与える一連の限局した観念』であり、妄想と異なり”訂正は可能”
② 意識野の狭窄した心理状態
・怒りの情動は”正常な精神作用”として説明できる
・怒りの情動抜きに犯行は説明できない
・情動には『不気味さ』も加わっており、精神障がいに起因する可能性がある
被告人が『呪われている』『悪魔が取り憑いている』と感じた点や『執拗に激しい攻撃』を加えた点は、被告の温和な普段の人柄とは明らかに異なっていることからすれば、急性一過性精神病性障がいが犯行に大きく影響したといえる。
一方、介護ストレスを抱える中、祖母の言動に怒りを覚えて犯行に及んだという一連の流れには”怒りの情動”という『正常な精神作用』が介在した。
また犯行時に身体を起こそうとした祖父を制止する発言をしており、状況に応じた対応が一定程度できていた。
犯行時に、精神障がいの影響を著しく受けていた『心神耗弱』状態であった疑いは残るものの『正常な精神作用』が介在していた部分も残されており、弁護人が指摘する『自我障がい』と『強固な支配観念』『妄想』の影響は、精神鑑定医の証言もあり、認められない。