5時間で10キロも移動するケースも 不明から3日目以降は“命の危険”も

広い行動範囲。私たちは、それを実感させられる現場に遭遇した。2022年12月、警察官が高齢者をまさに保護する瞬間だ。

警察官「どこから歩いてこられたの?」
男性「一番遠い所」
警察官「お怪我はないですか?」
男性「ないよ」
警察官「ない?よかった」「一旦パトカー行きましょうか?」
男性「え?」

靴は手に持っている、片足しか履いていない。この日の朝、自宅から姿を消し、5時間で10キロも移動していた。

一方、高齢者施設に設置された防犯カメラの映像。女性は、いったん部屋に戻った1分半後、再び廊下に出てくる。

施設の職員
「この方も認知症の方で、どうしても居室の中で落ちつかれない。外に出て行きたがるというか、そういうタイプの人ですね」

認知症の高齢者の中には昼夜問わず、何時間も行動し続ける人がいることも対策を難しくしている。

富山県高岡市の早苗繁さん(89)も…

繁さんの娘
「いつもこんなことよくある。わりと年寄りのくせに足速い。やっぱりうちに帰っとる」

娘が繁さんを探すこともしばしばだ。用水路に落ちたこともある。行方が分からなくなったことも数回ある。

繁さんの妻
「黙って出て行くもんでね。台所してる時とかトイレ入っている間に。私毎日帰ってくるまで、心配で心配で」

突然、自宅を出て行こうとする繁さんに、家族の心配は尽きない。この日も何も言わず、何度も外に出ていこうとしていた。

専門家は…

東京都健康長寿医療センター研究所 菊地和則さん
「必ずしも徒歩だけではなくて、自転車とかバスとか電車とか、公共の輸送機関を使ってあっという間に遠方に行ってしまうこともあります。これまでの研究では、行方不明になった当日もしくは翌日までに発見されると、生きていることが多いんですけど、3日目以降になると急速に生きている割合が減ってしまうことが分かっています」