容疑者にも“居場所さえあれば”
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谷本盛雄容疑者は、もともと“腕のいい板金工”で妻子もいた。しかし2008年の離婚を機に、2011年には長男に対する殺人未遂事件で懲役4年の判決が下されるなど生活が一変。出所後、社会復帰を目指したが、前科が邪魔して就職できず、友人関係も薄れ、孤立を深めていったとみられる。

伸子さんは、谷本容疑者についてこう振り返った。

(伸子さん)「すごく寂しい人生、誰にも自分の思いを言ってないような気がするんです。“それは間違ってるで”と言う人がいてもよかったのではないか。そこから何かできなかったのかなって思った」
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いま、少しずつ悲しみに向き合い、兄に思いをはせる機会が増えたという。天国の兄はいまの伸子さんを見て、たぶんびっくりしているんじゃないか、笑いながらそう語った。

(伸子さん)「(私が)すごく走り続けてるようにたぶん見えて、(兄は)ゆっくり歩いていけばいいんじゃないか、って言ってくれていると思う。兄に対しても自分が精一杯生きていくことが供養になると思ってる」

―――兄はいま、笑っているのだろうか。それとも泣いているのだろうか。

兄への想いを胸に、伸子さんは歩み続ける。