日銀がより主体的に決められる、貴重な時

アメリカ経済が減速すれば、当然のことながら、日本経済にもマイナスの影響を及ぼします。海外経済の減速で需要が大きく減衰する中で金融引き締めを行うことは難しいでしょう。日銀に残されたチャンスの時間は、それほど長くはないのかもしれません。

その一方、心配された円安は151円で大底を打って、足もとでは一服感がある上に、長期金利も1%超えを市場がアタックする気配もなく、日銀が直ちに「出口」に追い込まれている状況ではないことも確かです。

その意味では、今は、日銀がより主体的に決められる、貴重な時と言えなくもありません。

植田総裁の「チャレンジング」発言

日銀の植田和男総裁は、氷見野発言の翌日である7日、国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になると思っている」と述べました。一般的な心構えについての質疑でしたが、「挑戦すべき時」と聞けば、当然のことながら、誰でも「出口」を意識した発言と受け取ります。もちろん、植田総裁はそんなことは百も承知で、この表現を自ら使ったのでしょう。

この「チャレンジング発言」の後、植田総裁が岸田総理と会談したことも、さらに憶測を呼び、円相場は海外市場で一時1ドル=141円台にまで急騰する場面もありました。

興味深いのは、植田総裁が「来年は」とは言わず、「年末から来年にかけて」と、わざわざ「年末」を入れたところです。それが一体、何を意味しているのか。来年早々の「出口」を前に、不測の動きが起きることを警戒しているのか。あるいは12月の決定会合で、出口が近いことを、ある種、予告しようとしているのか。

歴史に記憶されるべき異次元緩和の最終章の幕が開きました。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)