FRBタカ派理事まで利下げに言及

円急伸を招いたのは、タカ派として知られるFRBのウォラー理事の28日の発言でした。

ウォラー理事は、FRBの金融政策について「良い位置にいる」と現状への満足感を示した上で、「インフレ減速があと数か月続くようなら、政策金利を下げ始めることができる」と述べたのです。

市場関係者が「来年夏にも利下げ開始か」と前のめりになっている中で、タカ派の理事までもが利下げに言及したことから、市場では「早ければ春にも利下げがあり得るかも」とお祭りムードが広がり、一気に金利安、ドル安が進んだのでした。

それでもFRBは「データ次第」と両にらみ

もっともウォラー氏の発言は、インフレが低下すれば、その分、実質金利が高まってしまうので、その際には名目金利を適切な水準に調整し得る、という経済学の基本を説明したする文脈で述べられたものです。

また同じ講演の中で、「インフレ減速の判断をするのは時期尚早だ」と先行きへの警戒も依然、緩めていません。

FRBとしては、あまり早く利下げサインを出してしまうと、株高が進み、インフレが再燃させかねないので、厳しい顔を見せ続けないといけません。

当面は、「データ次第」という決め台詞を繰り返しながら、インフレ沈静化の進展と、景気失速のリスクの両にらみの姿勢を維持するものとみられます。

市場の振幅は大きな展開か

それでも、確かなことは、利上げはあるとしてもせいぜいあと1回、いずれ利下げの時期が来る、ということです。

先を読む市場が先走るのも当然です。

市場が期待するようなアメリカの金利安、ドル高修正、そして株高に進んでいくのか。

潮目を越えた金融市場は、期待と不安の間で、振幅の大きな展開になりそうです。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)