全国でクマによる人への被害が過去最多のペースで起きています。なぜ、クマが人里にやってくるのか、さまざまな経験を元に、対策に試行錯誤する村を取材。どうしたらクマと人が共存できるのか、考えます。

近づくクマと人の距離

男性の体には、大きな傷跡が残っていた。

高橋和寿さん
「気がついたときには右肩に(ヒグマが)かみついていて、ここにヒグマの顔があった」

高橋和寿さん。10月13日、北海道・釧路市の川で釣りをした帰り、山道で親子とみられる2頭のヒグマに遭遇した。

高橋和寿さん
「釣りをして、鈴を鳴らしたり、声も出しながら行ったが、ばったり会ってしまった。子グマが自分に接近した瞬間に、親グマが怒ってしまった」

クマスプレーを噴射したが、ヒグマによけられ、全治3か月の大けがをした。

日本では、北海道だけに生息しているヒグマ。「人をこわがり、避けている」といわれるが、その活動範囲は、人の生活圏と重なってきている。

7月に駆除された「OSO(オソ)18」と呼ばれたヒグマは、4年間で66頭もの牛を襲った。クマは主に植物を食べるが、OSO18は味を覚えたのか、放牧中の牛を繰り返し狙った。

本州では、ツキノワグマの目撃が相次いでいる。10月には、秋田県の畳店の作業小屋に立てこもり、捕獲に丸一日近くかかったことも。

ツキノワグマはヒグマに比べて小さいが、人が襲われれば、死にもつながるのは変わらない。クマによる死傷者の数は、過去最悪のペースだ。

全国の住宅地に出没するクマ。中でも、人口190万人を超える大都市・札幌では…

2023年、220件以上(11月25日現在)の出没情報が寄せられている。この10年で最も多い件数だ。

北海道では、クマと人がどう共存していくか、試行錯誤が続いてきた。その歴史は、100年前に遡る。