地球を全体で見たとき、海の水深を平均で表すと3800メートルです。そして、海全体の95%が水深200メートル以下で、海面付近のおよそ800倍以上の水圧がかかる「深海」にあたります。

光すら届かない未知の環境に暮らす「深海魚」についてつぶさに調べ、生命の危機を地球規模で考える研究者がいました。

長い、ながぁ~い体が特徴的な深海魚「リュウグウノツカイ」

リュウグウノツカイ


水深1000メートルほどの深海に生息し、幻想的な姿がおとぎ話の「竜宮城」をイメージさせることからその名が付いたと言われています。

浅瀬を泳ぐリュウグウノツカイ(越前松島水族館提供)


記者「金沢大学には、その謎多き深海魚についてかなり細かく分析する研究者がいるということです。彼は何を調べようとしているのか。その謎に迫ります。」


「第6の絶滅が来ている」未来を変えるカギは“過去”だった

金沢大学地球社会基盤学系 ジェンキンズロバート准教授「最近、より新しい時代に第6の大量絶滅があるのではないかと言われ始めている。それが今なんです。実は大気中に含まれる二酸化炭素はその大部分が海に吸収されていく。人間がいろいろな活動をする中で環境が壊れていったり急激な環境変化が起きて、生態系や生物が適応できずにどんどんと絶滅してしまっている」

金沢大学 ジェンキンズロバート准教授


「第6の絶滅が来ている」と警鐘を鳴らすのは、金沢大学のジェンキンズロバート准教授です。

深海に住む爬虫類の死体に群がる生物=「竜骨群集」を世界で初めて発見し、世界トップクラスの科学誌に掲載された実績もあります。

過去に絶滅した魚の化石や、現在も海深くで生き続ける生物の生態や生息環境を研究するロバート准教授は、過去から現在の流れを知ることが未来を変える一番の近道だといいます。

ジェンキンズロバート准教授「我々は時間軸の中で生きているので、過去から現在というのが把握できることによってその先の延長がどうなっているのかと、未来をやっと知ることができると思う。今この瞬間を調べているだけでは不十分だと思って、化石から現在にというその中でいろいろ調べている。」

深海魚を医療用CTスキャンに⁉ 研究者の狙いとは?

CTスキャンロバート准教授がリュウグウノツカイを調査するために使ったのが医療用のCTスキャンです。

リュウグウノツカイを医療用CTスキャンに⁉


エックス線写真を複数枚撮影し、立体的に体内を検査できるこのCTスキャン、本来、人間に使われる器具ですが、いったい、なぜ?

ジェンキンズロバート准教授「人体にCTスキャンを使ったときと同じように骨と肉を分離して検査できる。深海魚は骨が軟化しているようなことがよくあるが、リュウグウノツカイは背側の骨の一部がかなり硬化が進んでいる。なぜこういうことが起きるのか。深海という環境でどんなふうにその骨を作ったりしているのか、その深海へどうやって生物が適応しているのかそういったことがこのCTのデータから得られるといいなと。」

CTスキャンから得られたデータ



水深約1000メートルで生息するリュウグウノツカイ。地上の800倍以上の水圧に耐え、光すら届かない極限状態の中で大きな体を維持してきました。

得られたデータには謎多き魚の生態を暴くためのさまざまなヒントが隠されていました。

ジェンキンズロバート准教授「この頭部の中に耳石がある。耳石には実は成長記録が残っている。例えばこのリュウグウノツカイがどれぐらいの水温帯を移動してきたかや、何歳ぐらいなのかとか、骨の中に入っている有機物を分析することでこのリュウグウノツカイが何を食べていたのか。深海生態系の中でのリュウグウノツカイの位置がわかって、めちゃくちゃおもしろい点は、深海魚の中でもサイズがデカい。大きいものだと記録として残っているのは8メートル。それだけデカい体をどうやって深海で維持しているのかが分かる。」

「耳石」について説明するロバート准教授

「一般にも公開したい」リュウグウノツカイを骨格標本に

記者「いまリュウグウノツカイが担架のようなものに乗せて運ばれていきます。これからいったい何が始まるのでしょうか?」

この日、ロバート准教授はリュウグウノツカイを外に運び出しました。

骨を取り出し標本化するため3か月ほど漂白剤につけ込み肉を溶かしていく作業です。

漂白剤に漬け込み、骨を溶かしていく作業


ジェンキンズロバート准教授「深海ってみんなにとって見えない環境だからブラックボックスになっているんですよね。深海魚って上がった瞬間だけニュースになるけどそのあとその中身を見たいとか、そういう興味を抱いたとしても標本にアクセスできないじゃないですか。せっかくなので骨格標本にして安定に保存してみんなに展示できるようにしたいなと。」

多くの人に骨格標本を公開したいと話すロバート准教授。地球の生命について考えるきっかけにしてほしいとの思いがあります。

ジェンキンズロバート准教授「実は自分たちの知らない所にもいろいろな生き物が住んでいたりとか、実はそこに地球のからくり、地球環境がどういうふうなシステムで成り立っているのかとか、そこにぜひ目を向けてほしいなと思う」

深海を生きる謎多き生物たち。研究者たちは未知の世界からヒントを得ながら、第6の絶滅から未来を変えるための活動を続けています。