■中国は国民の不満が政治に反映しない仕組み


盤石といわれてきた習近平体制を脅かすゼロコロナ政策への不満。ゼロコロナがもたらす中国経済への悪影響は数字で顕著に表れている。
そのひとつ「若者の失業率」。これは過去最高の18.4%だ。コロナ禍で企業、特に中小企業が大ダメージを受け新規採用は激減している。企業の収益が減れば税収も減る。結果財政収入は前年比マイナス10.1%。その一方でゼロコロナ政策ゆえの出費、大量のPCR検査費。これが年間実に29兆円に達するという。これは中国トップ企業500社分の納税額を上回る額だ。これらの数字は日本やアメリカなら政権維持はあり得ないだろう。しかし・・・

宮本雄二 元駐中国大使
「国内、党内の不満は確実に高まっている。ただ、その不満が日本の選挙制度のようには政治の中で反映されない。中国はそういう仕組みなんです。だから習近平政権は表面上安定しているように見える。でもそれを覆す大きなガス爆発が起こればその局面は大きく変わる。ガス爆発になりうるのは経済問題。習近平さんは党大会までにコロナをゼロにしたい。でもそうはいかず変異種が入って広がったりすると経済に影響する。そうなると不満は増す・・・」

さらに対米関係も重要で、特に台湾で中国軍が大胆な活動をした場合、アメリカとの関係は悪化する。この時習近平政権はアメリカとどう向き合うのか。

宮本雄二 元駐中国大使
「習主席はアメリカに厳しすぎる。経済発展のためには安定した国際関係が必要だと。対米関係が動揺すると全体的な国際関係が動揺。そんな中でいつものようにビジネスができるかって言ったらできないんですよ。経済発展のために対米関係をうまくやって欲しいが、習近平さんは逆のことをやっている。(中略)アメリカとうまく向き合えない人が今後5年間中国の指導者でいいのかってことになる。経済と対米関係、この2つが習近平政権のアキレス腱に成りうる。この2つに大きな問題が起これば党内の雰囲気はたちどころに変わる。政治は一寸先は闇。それは中国も同じなんです」

(BS―TBS 『報道1930』 7月1日放送より)