年末年始の食卓に並ぶ食材の一つといえば「ブリ」。この養殖ブリの取り引きが今、低調に推移していて、出荷待ちの魚が大量に余る事態に。現場で何が起きているのか取材しました。

大分県佐伯市蒲江にある「浪井丸天水産」。ここでは、養殖ブリを中心に、年間およそ7万匹を出荷しています。年末年始にかけて需要が高まる冬の味覚・ブリ。しかし今年は異変が――。

浪井丸天水産・浪井大喜代表:
「例年と比べて動きがあまり活発ではない。もう少し価格が高いと固定費を払える分に届くけど厳しい状況」

北海道では天然のブリが豊漁となっている一方で、養殖ブリについては取り引き価格が去年に比べ6割程減少し、原価割れに近い状態に。要因ははっきりしていませんが、受注や問い合わせの動きも鈍く、出荷待ちの魚が大量に余っているといいます。さらに――。

浪井丸天水産・浪井大喜代表:
「エサ代は月に2000~3000万円支払っている」

円安や物価高の影響でエサ代がこれまでの1.5倍に高騰。エサの経費率が10パーセント近く膨れ上がり、経営を直撃する事態に陥っています。

浪井丸天水産・浪井大喜代表:
「ずっと売れ残ったら商売がとまってしまう。新しいお魚を入れる場所もない。売れ残るということは事業をやめることにつながりかねない」

浪井代表はビール酵母で育てた独自ブランド「若武者ハマチ」を今年初めて中国に輸出する予定でした。しかし、東京電力福島第一原発の処理水の放出を巡る中国の禁輸措置を受け白紙となりました。

全国的に中国向け水産物の輸出額は減少が続き、9月は8億円と去年に比べ9割以上も減少しました。

浪井丸天水産・浪井大喜代表:
「今回販売先を福岡に広げようと配送用に買った車両です」

厳しい局面を打開しようと、浪井代表は県内がメインだった販売ルートを県外に広げるため、冷蔵車両を導入。また県の支援策の一環として台湾の商業施設でPR活動にも参加。海外も視野に入れて販売ルートの開拓に取り組んでいます。

浪井丸天水産・浪井大喜代表

浪井丸天水産・浪井大喜代表:
「実際ピンチになって思ったのは少しでも力になればというお声や注文をいただけてありがたい。ある種のチャンスと踏まえて新しい販路と販売を展開していきたい」

手塩にかけた魚を何とか出荷しようと奮闘する水産業者。直面する厳しい状況は、国際情勢や世界経済などが大きな要因となっているだけに、自助努力以外の幅広い支援策が求められています。