「地域を徹底的に愛し、恩返しをする」

プロサッカー選手引退後、村田さんのふるさと「滋賀県にJリーグを」を合言葉に、2021年、「ヴィアベンテン滋賀」というアマチュアサッカーチームを立ち上げました。オーナー兼監督兼選手という「三足のわらじ」。元Jリーガーといっても、一から作ったチームをJリーグに押し上げるのは、容易ではありません。

いつでも使える練習場はなく、ユニホームも村田さんを慕って集まった大学生とデザインしました。
「Jリーガー時代に買った自慢の外車も売り払いました。ゼロからの再スタートです」


地域への思いは人一倍強いと語る村田さん。中学生の時に父親を亡くし、苦労した頃、地元の人にたくさん助けてもらい、いつか恩返しをしたいという思いが、いまのクラブのコンセプト「地域を徹底的に愛し、恩返しをする」につながっているといいます。

その思いをすぐに具現化した村田さん。試合のない週末には、チームで琵琶湖の清掃活動や学校訪問をしてボランティア。試合を観に来たファンには、地元農家に提供してもらったキャベツを選手たちが手渡しで配ったりもします。そのひたむきな姿にひかれ、ひとり、またひとりとファンが試合を観に来てくれるようになりました。

村田さんがかつてエスパルスでプレーしていた時、清水の商店街を歩くだけで、地域の人たちが喜んでくれたそうです。村田さんは「サッカーチームには、ピッチの外でも地域を元気にする力がある」と実感しています。


チーム発足から1年後の試合で、ヴィアベンテン滋賀は約500人の観客を集め、滋賀県サッカー協会の関係者は「長い間、関係者しか観に来なかった県大会の試合に、こんなに人が来るとは」と目を丸くしました。客席の雰囲気だけは、Jリーグさながらの盛り上がりです。

普段は工場で飲料を運ぶFW三輪敦規選手の前にも、サインを求める子どもたちが列を作ります。普通のお兄さんが地元のスターになった瞬間です。三輪選手は「スイッチが入りました。いまは滋賀の子どもたちにどうやって貢献しようかといつも考えています」と興奮気味に話してくれました。