「あなた」と「あんた」の違い

まず、質問者が書いていた 「あなた」がきつく感じられるという意見と、そうでもなく使えるという意見があるのは 、地域差というより 共通語の世界での世代差と考えるべきでしょう。 なぜなら、方言では 「あんた」 を使う地域はあっても、「あなた」を使うのは東京を中心とした関東地方くらいでしょう。

「あなた」は江戸時代半ば、文化の中心がそれまでの上方から江戸に移った1700年代半ば以降に江戸を中心に使われ始めました。

それ以前は、室町時代から使われた「貴様」、江戸時代前半の上方語では「お前」が丁寧に相手を呼ぶ二人称代名詞だったのですが、“敬意逓減の法則”という、使っているうちに次第に丁寧さを失っていく変化によって、「貴様」「お前」が対等よりも下の相手にしか使えなくなったために、それに代わって、本来は遠くの方を指した 「彼方 (あなた) 」 を自分とは心理的距離のある目上の人を指す二人称代名詞として江戸時代後半以降使うようになったのです。

使っているうちに次第に丁寧さを失っていく

しかし現在では、上の世代ではまだ「あなた」に丁寧さを感じている人がいる一方で、 60代以下では「あなた」も、敬意逓減の法則で敬意がすり減ってしまい、 今や対等かやや下の相手にしか使えなくなってきてしまっているのです。