「ジッポン」か「ジュッポン」…背景は中国にあった

中国から「十」の文字が日本へ伝わったころの発音が「ジフ」に近かったことが理由です。

「ジフ」は、平安時代に起こったハ行転呼音(語中のハ行音がワ行音に変化)により「ジウ」となり、さらに「ジュウ」と変化したのです。さらに「十」の後に無声音(声帯を振動させずに発音する音)であるカ・サ・タ・ハ・パ行の音が続く場合にだけ、「ジフ」から「ジッ」への変化も起こりました。こうした経緯からは「ジュッポン」「ジュッコ」より「ジッポン」、「ジッコ」が古く、伝統的な発音であることがわかります。

「十」の発音の背景は…

「十中八九」の読みについて、NHKが行った1963年と1993年の調査ではともに
「ジュッチューハック」と読む人が6割以上を占め、「ジッチューハック」と読むは、2割以下でした。2010年の「改訂常用漢字表」の「十」の音には、例えば「十回」に対して「ジッカイ」を挙げながら、「ジュッカイ」も認めています。

あなたはどう読む?

 このように、「十本」「十個」などで年配の方やアナウンサーの人たちは「ジッ」と発音する人もいて、新しい「ジュッ」との間で「ゆれ」がありますが、どちらの発音も認められています。現状は「ジュッ」の発音が多数派となっており、今後ますます増えていくと考えられます。

加藤和夫:福井県生まれの言語学者。金沢大学名誉教授。北陸の方言について長年研究。MROラジオで、方言や日本語に関する様々な話題を発信している。