「母乳バンク」の利用が医療機関で広がらない理由

ドナーミルクの利用者が増えているにも関わらず、提供する病院は多くない理由、それは「病院側にかかるコスト」だと現場の医師は指摘します。

ドナーミルクを使用するには、「使用施設」として登録し、年会費を支払う必要があります。年会費は使用量によって幅がありますが、最低でも年間5万円かかります。(下限:年間2リットルまでで5万円 上限:年間60リットル以上で100万円)

病院によっては新たに冷凍庫などを準備したり、人員を確保する必要も出てきます。しかし、ドナーミルクは利用者に基本的に無償で提供することになっていて、病院側に収入はありません。

富山大学附属病院・猪又智実医師:
「小さいNICUでは、かかる費用がメリットに見合っているのかというところが問題になってきやすいので、この普及のためにはぜひ国だったり行政だったりが後押しをして欲しいなと思っているところです。ドナーミルクをうまく使って、1人でも多くの赤ちゃんを、なるべく元気に社会に送り出していきたいなと思っています」


猪又医師は「粉ミルクで元気に育つ赤ちゃんもたくさんいるので、ドナーミルクを勧めるケースは選んでいきたい」としながらも、多様なケースに活用できる可能性から、今後使用する幅を広げていくことも検討しています。
病院では通常、粉ミルクを利用するお母さんからは「食事代」をとっていて、猪又医師は今後、ドナーミルクについても「食事代」をもらう形で経済的に維持していく方法も考えているということです。

ドナーになりたくても登録施設が少ない現状

母乳を提供する「ドナー」になりたい場合、その手続きを行う「ドナー登録施設」に行く必要があります。しかし現在、「ドナー登録施設」は全国にわずか29か所で、富山県にはありません。富山県民が今、登録するには、インターネットから母乳バンクに申請の上、県外の施設を訪れることになります。「ドナー登録施設」は基本的に医療機関で、こうしたドナー登録施設が増えることも期待されています。