なぜクマが人里に降りてきているのか?

その答えの一つが“山”にありました。

野生生物などを研究している新潟大学農学部の箕口秀夫教授に同行しました。
阿賀町の山中で、クマの生態を観察するため山中に仕掛たカメラのメンテナンスに向かっています。

その途中、枝が枯れたクルミの木を見つけました。

「これがクマ棚と言われているもので、クマがクルミの木を持って周りの枝を手繰り寄せた時に折れてしまったものが枯れてぶら下がっているものです」
「今年はオニグルミ以外に餌が限られているので、多くのクルミの木に、このようにたくさんのクマ棚が作られています」

『餌不足』から、クマ棚が多くみられているそうです。

新潟県の調査によりますと、今秋はクマの餌となるブナの実が県内全域で『凶作』となっています。
実際に山の中を歩いてみても…

【新潟大学農学部 箕口秀夫教授】
「この林でも並作であれば、もう今の時季にどんぐりが落ちているんだけれども、こうやって見渡してみても、なかなかドングリが見つからない…」

餌の不足でクマの行動圏も変わっているそうです。
大きなクルミの木がある場所に設置された定点カメラの映像を見てみると…

【新潟大学農学部 箕口秀夫教授】
「決まって毎年この場所を使うクマも映っているんですけれども、今年はそれ以外に“初めまして”のクマが何頭も映っている」

クマが例年以上に広範囲で移動していることが分かると言います。

【新潟県鳥獣害対策支援センター 渡部浩所長】
クマの出没警戒警報を県として発表させていただきます」

お腹を空かせたクマが「餌を求めて街中に降りてくる危険性が増している」として、新潟県は今年9月に、3年ぶりの『クマ出没警戒警報』を発表しています。

これから冬前にかけて「より危険度が増す」と、新潟大学農学部の箕口教授も指摘します。

【新潟大学農学部 箕口秀夫教授】
「冬眠までにはまだ2か月以上あると考えると、その間クマは餌がない状況の中で餌を求めなければいけないということで、人里や市街地といった所に気をつけなければいけない」