■「親がちゃんと愛してくれていれば」“親ガチャ”の悲しい現実

トー横の存在はSNSでも広がり、全国から若者が集まっている


ほかに居場所がなく、刹那的でも、この瞬間を生き延びるためにトー横を必要と感じている若者がいるのかもしれない。しかし、それぞれが抱える根本的な課題の解決がトー横にあるとは思えない。トー横に集まる若者たちは、この先の未来についてどう考えているのだろうか。先ほどのグループの若者たちに聞いた。

ーーいつかこの場所に来なくなるときってどういうとき?

「養ってくれる人ができたとき。好きな人とか」

「好きな人できたから歌舞伎卒業する人もいるから」

「多い、多い


一瞬、若者たちの語り口は、夢見るような明るいトーンになった。しかし、その後、影が射し始める。

「でもね、やっぱりね好きな人作るとこがないから、ここで作って、好きってなっても、2ヶ月後ぐらいには戻ってきちゃう。別れたりとかして」

「別れて気まずくなってもね、だってここでどうせ会うから。広場で会うんで」

「あんまりなんていうの、意味ないかな」

「ま、愛に飢えてる子が多いからね」

「愛されたいとか、認められたいとかいう女の子が多いから」


そして、インタビューの最後に少女がぼそっと言った一言に、グループ全体が静まり返った。

「親がちゃんと愛してくれてれば・・・」

トー横には今も若者たちが集まっている。休みの日などは、100人ほど集まることもあるという。その一人ひとりに、トー横に来るそれぞれの理由があるのだろうと思う。今回話を聞いた若者たちがそのすべてを代弁しているわけではもちろんない。しかし、根底にそこはかとなく流れる普遍的な背景の一つが浮かび上がってきたように感じた。(取材・執筆 NEWS DIG編集長 久保田智子)


(6月16日放送・配信『SHARE』より)