■トー横は闇落ちか、救いか?軽い友情だからできること

ーートー横はどういう居場所?なぜそんなに必要なのですか?
「毎日死にたいって思っちゃう子とかがいっぱいいる」
「でも、それを止める人が多いから。かまってくれる人が多い」
「見捨てられない程度に、お互いの友情関係があるから、うん。止めてくれる、死のうとしても。だから、そういうところでは必要としてくれる人がいるって思えるのがいいんじゃないすか。知らないですけど。知らないですけど」
最後に「知らないですけど」とぶっきらぼうに2回言い添えたのは、もしかすると真面目に話したことへの照れ隠しだったのだろうか。
単なる「たまり場」だというトー横という居場所。そこにあるのは、深刻な過去をも笑い飛ばす、見捨てられない程度の友情関係。しかし、その軽い友情関係は、「死なない」という重い決断を支えているようだった。
■大人の常識と、トー横の若者が求めている支援のズレ

危険と隣り合わせのトー横。しかし、危険だから近づくな、などという大人の常識を振りかざすことが、本当にトー横に集まる若者を救えるとは限らないのかもしれない。ある少年は私たちの取材に、これまでの大人のトー横への関わり方に疑問を呈した。
「トー横っていう環境は、結構、行政レベルのサポートは必要だと思うんですよ。でもやっぱ子どもっていう身分だから、サポートは保護所に行ったりとか、あとは鑑別所に行ったりとかっていうので、補導されて、子どもが自由を奪われることになる。
普通、子どもが暴力を親から受けてここに逃げてきたら、警察に通報したらいいじゃないって思う人がいるといると思うんですけど、警察に通報したら親が暴力ふるっているんだとしても、保護されちゃうのは子どもの方で、子どもの自由がなくなったり、友達と会えなくなっちゃう。そういうのを嫌ってる子が多い。
できればこういう状況にならないのが一番なんですけど、トー横で助けが欲しい子がいっぱいいるので、一概に悪い場所とは言って欲しくないです」

トー横ならみんなで助け合って生きていけるのだと少年はいう。16歳の少女にみだらな行為をしたとして逮捕された小川雅朝容疑者は、自らを「ハウル」と名乗り、トー横に集まる居場所のない若者に手作りの食事を振る舞っていた。少年は小川容疑者のことを「ハウルさんはいい人」だと話した。
この取材の時(6月9日)も、トー横の若者たちの輪の中心に「ハウル」はいた。2,3言葉を交わしたが、取材に関しては金銭などを要求されたため断念した。