鹿児島県出水市に来週、新たな宿泊施設がオープンします。泊まった人にゆったりとした時間を過ごしてもらおうというその施設は、武家屋敷群の空き家となっていた屋敷が生まれかわったものです。

(RITA出水麓宮路邸 森園さとみ支配人)「こちらが農(みのり)というお部屋です。井戸や脱穀機など、生活をしていた事が分かる空間になっています」

新しくオープンする宿泊施設「RITA 出水麓宮路邸」。NHKの大河ドラマ「篤姫」のロケにも使われた出水麓武家屋敷群の“旧宮路邸”を改修したものです。
今の母屋は1904年に建て替えられたものですが、広い庭や畑など、半分は農業をしていた地方武士の暮らしを伝える、江戸時代の敷地が残る数少ない屋敷の一つです。

出水麓武家屋敷群は肥後の国境にあり、薩摩藩が113か所に置いた行政や軍事の拠点「外城」でも特に重要視され、最大規模だったとされています。今も美しい町割りや石垣が残ることから、国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれています。

そんな出水麓の魅力にひかれて移住したという、森園さとみさんが支配人です。

(森園さとみ支配人)「古い物と新しい物が融合しているところが魅力なので、タイムスリップしたような感覚を楽しんでもらえたら」

“遺産”や“伝統”を意味する英語「HERITAGE」の真ん中の4文字から名づけられたという「RITA」は、宿泊可能な3部屋でそれぞれ違った出水麓の伝統に触れることができます。

「農‐MINORI‐」は井戸やかまど、囲炉裏の跡が残り、かつての生活空間の雰囲気を感じることができます。
「紅‐AKANE‐」は、目上の人を迎える部屋に使われた赤茶色のベンガラの壁と、裏の畑へと続く石垣がポイントです。
「謐‐SHIZUKA‐」は2階にベッドルームがあり、広い客室と日当たりの良い縁側から、枯山水の庭園を楽しむことができます。

ゆったりとした時間を過ごすことができるように、それぞれの部屋には時計やテレビがなく、日没後はライトアップされた風景を楽しむこともできます。

そして宿泊客にはこんなプレゼントも。

(森園さとみ支配人)「こちらが宿からのプレゼントで、RITAそらきゅうと申します」

かつて武士たちが宴会で使ったという、底がとがった特徴的なおちょこ「そらきゅう」です。宿泊客に地元と交流してもらおうと、食事をあえて提供しないため、地元の店に食事に出かける際のコミュニケーションに役立ててもらおうと、1組に1つプレゼントします。
そして、提携する地元の店で「そらきゅう」を見せれば、割引やサービスを受けることができます。

提携する店は、現在は本町通商店街の3店舗のみですが、今後さらに増やす計画です。武家屋敷群に初めて誕生した宿泊施設に、協力する地元の飲食店も期待しています。

(すみとCAFE 伊達あすみオーナー)「期待感はあります。美しい景色が広がっているので、そこに訪れて、さらに商店街に足を運んでもらえる流れができるのはすごくありがたい」

空き家になっていた武家屋敷を再生させ、地元を盛り上げていきたいと、支配人の森園さんは話します。

(森園さとみ支配人)「これまで空家として見るだけのものになっていた空間に、沢山の人が来てくれるのが楽しみ」

「RITA出水麓宮路邸」は今月30日にオープンし、料金は、4人の1室利用で1人1泊1万8865円からです。