2030年までに戦略事業利益50%以上を目指す。失敗を許容しないと新しい挑戦は生まれない

――いわゆる両利きの経営で、二つを同時にやっていくのは難しいのでは?

AGC 平井良典社長:
たいていは新規事業をやっている部署は成功確率が低いから、なかなか儲からないということで、会社全体がそれを支援する形になっていなかったのが、日本のまずい点だと思っています。私は若い頃にシリコンバレーで仕事をした経験がございまして、シリコンバレーというのはベンチャーキャピタルがすごく若手の経営者を支援すると。その仕組みと失敗を許容するという仕組みがあって、その考え方を取り入れて、コア事業の人も戦略事業を邪魔するどころか、ちゃんと支援してくれるようになっています。

戦略事業のエレクトロニクス部門では、世界でも2社しか提供していない半導体のガラス基板を製造している。ライフサイエンスの分野ではバイオ医薬品の製造受託で国内トップとなっている。モビリティ分野では窓がディスプレイになる高機能ガラスや自動運転用部品の開発製造なども行っている。

――ガラスから派生したものでないものもありそうだが、本業からつながってきたビジネスなのか。

AGC 平井良典社長:
はい。1907年の創業は建築用のガラスからスタートしているのですが、全ての事業は建築のガラスと根っこではつながっています。

――半導体の関連製品はEUVフォトマスクの原版で、これがあるから半導体製造装置ができる。

AGC 平井良典社長:
非常に微細なナノメートルのオーダーでの微細なパターンがその中に刻み込まれて、それが半導体のチップに焼き付けられると。半導体メーカーさんの黒子として材料を提供しています。

――窓がディスプレイになる高機能ガラスや自動車用の新しいガラスは有望な分野なのでは?

AGC 平井良典社長:
自動車は今「CASE(ケース)」と呼ばれていて、自動運転や電気自動車を中心とした大きな変革が起こっています。車は四方をガラスで囲まれていて、人間の目で見えているところは、基本、外を見ていると言っても、まずガラスを見ているんです。ガラスの上にいろいろなセンサーやカメラがついているので、これからますます増えていくと。

――開発には投資してから長い間かかるのでは?

AGC 平井良典社長:
研究開発からでいくと、平気で10年、20年かかっています。しかも成功確率はそんなに高いわけではないので、非常に多くの題材を仕込み出して、それが10年経った時点でいけそうだったら事業化に踏み切るという判断をして。AGCは戦略事業が成功していると言われるのですが、その裏には失敗がいっぱいあるわけです。

――失敗した事業に携わった人たちがきちんとエンカレッジされるような仕組みでないと、結局続かない。

AGC 平井良典社長:
おっしゃる通りで、新規事業の成功の秘訣は単にテクノロジーだけではなくてカルチャー。チャレンジを奨励して、ある程度の失敗は許容しないと新しいチャレンジは生まれないです。

――コア事業と戦略事業の営業利益の構成比を見ると、2030年には戦略事業のほうが多くなるのか。

AGC 平井良典社長:
そうですね。2030年までに戦略事業から得られる利益を50パーセント以上にしたいと思います。

(BS-TBS『Bizスクエア』 10月14日放送より)