環境に合わせ進化 垂直の断崖を駆け上がるカンガルー

クイーンズランドの森の近くに岩山だらけの一帯があり、そこにも環境に適応したカンガルーの仲間、マリーバイワワラビーが暮らしています。

驚くべきことに、彼らはほぼ垂直の断崖を駆け上ることができます。スローモーションで映像を見ると、わずかな傾斜に足をかけ、強力な後脚でジャンプし続けて上っていることが分かりました。

そのため岩場でのかかりが良いように、足の裏の肉球がゴムのようになっています。

マリーバイワワラビーの肉球

最初はネズミのような姿で森に暮らしていたカンガルー。そこから、草原に出てジャンプ力を身につけたもの、岩山に適応して登坂力を身につけたもの、さらに木に登り樹上生活に適応したものなど、環境に合わせてさまざまに進化していったのです。

もうひとつ、奇妙でテレビ的な鳥も撮影することもできました。やはりクイーンランドの森にしかいない、コウロコフウチョウです。

オスが求愛のダンスを踊るのですが、そのダンスは応援団がエールを切るときのポーズとそっくり。脚を踏ん張って両方の翼を高く広げ、次に左右の翼を交互に旋回させます。「バサッバサッ」という羽音のキレも良く、仮面ライダーの変身ポーズも彷彿とさせます。

踊るコウロコフウチョウ

文章ではなかなか面白みが伝わらないのですが、映像で見ると抱腹絶倒の楽しさです。ちなみにオスは子どもの時からこの求愛ダンスの練習を始めます。それを見つけた大人のオスが、「お子ちゃまには10年早いんだよ」という感じで威嚇するシーンも撮影できました。本当にテレビ的な鳥です。

子どもを威嚇するコウロコフウチョウ

自然遺産として世界遺産になるためには、4つの登録基準のどれかを満たす必要があります。簡単にいうと、「自然美」、「地球の進化の見本」、「貴重な生態系」、「絶滅危惧種の生きる場所」の4つです。クイーンズランドの森は、実にこの4つの基準すべてを満たして世界遺産に登録されています。

今回は、4つの中の「貴重な生態系」と「絶滅危惧種の生きる場所」について、クイーンズランドの魅力を紹介しました。番組では、「自然美」や「地球の進化の見本」についても取り上げる予定です。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太