オーストラリアの東海岸に沿って450キロも伸びる森が、世界遺産「クイーンズランドの湿潤熱帯地域」です。ここは世界最古の森のひとつ。恐竜時代から姿を変えていない世界最大のソテツが生え、ヒクイドリというちょっと恐竜っぽい巨大な鳥も暮らしています。
体長1メートル超 「世界一危険な鳥」
ヒクイドリは体長1メートル以上もある飛べない鳥ですが、高速で走ることができる強い脚と鋭い爪を持ち、「世界一危険な鳥」と呼ばれます。

番組で、その保護施設を撮影したことがあるのですが、見せてもらったヒクイドリの卵はソフトボールよりも一回り大きく、ビックリするほど鮮やかなグリーンでした。鳥類は恐竜の末裔ともいわれますが、ある種の恐竜の卵は、草の中で目立たないように緑色だったそうです。ヒクイドリの卵が緑色なのも、森の中で見つかりにくくするためなのかもしれません。
ヒクイドリ以外にもクイーンズランドの森は奇妙な生きものが多く、ここだけでしか見ることが出来ない動植物=固有種の宝庫です。

たとえば木に登るカンガルー、カオグロキノボリカンガルー。その名の通り、顔が黒くて樹上で生活しているカンガルーです。一般的にイメージするカンガルーとは見た目がかなり違い、木の上で暮らす尻尾が長いサルに似ています。そうしたサルと同じように、木登りカンガルーも長い尻尾で枝の上でバランスを取っているのです。

また鋭い鉤爪を持ち、この爪を使って巧みに木に登り、葉っぱを食べて暮らしています。鉤爪が発達しているところは、やはり樹上で暮らすナマケモノにも似ています。このように種は違っても、他の木の上で暮らす動物たちとどこか相通じるところがあります。今年、この木登りカンガルーを番組で撮影したのですが、顔も木登り姿も愛嬌があって、魅力的な映像を撮ることができました。

さらにクイーンズランドの森では、滅多に姿を見ることがない貴重なカンガルーの撮影にも成功しました。絶滅危惧種のニオイネズミカンガルーです。ルックスも動きもどう見てもネズミですが、最小のカンガルーでれっきとした有袋類。最も原始的なカンガルーの姿を留めていることから、「生きた化石」とも呼ばれます。

太古、地上に出現したばかりの頃のカンガルーは、このように森の中をネズミのように歩き回っていたのです。