「まだまだ強くなれる、速くなれると思っているので、そこに向けてチャレンジしていきたい」と9月の合宿中に目に力を込め話した大迫傑(32、ナイキ)。15日(日)に行われるMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ)で2大会連続の五輪出場を狙う注目選手だ。

過去2度の日本記録を樹立し、2021年の東京五輪で6位入賞後に一度引退した大迫は、去年2月に現役復帰を宣言。今年3月の東京マラソンで2時間6分13秒のタイムでMGC出場権を獲得した。

大迫選手

そんな大迫の実力をシドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんはこう話す。

「彼の武器は安定感です。マラソンで失敗している姿を見た事がありません。42kmという距離の中で、自分の力を出し切る事が上手い。本当に自分自身の事をよく知っているなと思います」

大迫のレース展開については「まず前半、後方からしっかりとレース全体を見渡す。客観的にレースを見られるのが彼の特徴でもあるので、前半はそこで温存する。誰が仕掛けても、それに惑わされずにスルッと付いていける。力を使わずにその流れに乗る事が出来るのも大迫選手の武器ですから、後半までにサバイバルレースのようにしっかりと集団の中にいる事が出来れば大迫選手の流れです」。

最後に高橋さんは意外な事実を明かすとともに、決戦へ向けた大迫に期待を寄せた。

高橋尚子さん

「前回のMGC(2019年)、ラスト勝負で負けているんですよ(3位)。本当にそこは凄く悔しかったでしょうし、ここに向けて強化をしてきた部分でもあると思うので、今回は大迫選手ならではのスピードで勝ち切るレースが出来れば、パリ五輪がしっかり見えてくると思います。実は大迫選手、マラソンで勝った事(1位)がないんです。勝つ事を経験した選手は非常に強いので、このMGCで大迫選手が勝てば、またさらに強くなった姿でパリに向かえると思います」

大迫自身も、9月のインタビューでこう意気込んでいた。

「まずは自分がベストな走りをする事、特にこのMGCという大会では何かを伝えたいから走る、というよりはまずは自分自身が走りたいし、速くなりたいからスタートラインに立つという事を意識していけたらと思います」

純粋にスピードに拘る”孤高の求道者”が、初めてフィニッシュテープを切る姿が見られるのか、注目したい。

■大迫 傑(おおさこ・すぐる)
1991年5月23日生まれ。東京都出身。ナイキ所属。
3000m・5000m日本記録保持者。マラソン前日本記録保持者。