◆井ノ原さんの発言で記者が分断された?

次の会見が開かれれば、1社1問形式は採用しないと思いますが、質問する側も節度を持ってほしいと思います。前回は騒々しい場面もありました。あのときの井ノ原さんが「どうかどうか落ち着いて。お願いします」と呼びかけましたが、「子供たちのために」と理由を加えたことが、あざとすぎるんじゃないかという声が上がりました。僕もそう思います。

それにしてもほかの記者から拍手が起きたのはびっくりしました。「それはジャーナリズムの衰退だ」という声もありますが、あまりに騒がしかったから、それを諌めるような、しかもジェントルな対応をする井ノ原さんに、思わず拍手してしまったというのが本音の人もいたのだろうと思います。

でも、そういう心理になること自体がもう異常でしょう。井ノ原さん自身は何か効果を狙ってのことじゃないと否定するでしょうが、ああいうところで冷静さを保つのは、取材する側も難しいんだということを感じさせる出来事ではありましたね。

この会見の場面で思い出したことがあります。トランプ政権下の2018年、大統領と欧州委員会の委員長の記者会見で、アメリカCNNの女性記者の発言が問題視されて、ホワイトハウスがこの記者にそれ以降の会見の出席を禁じることがあったんです。

ホワイトハウスの広報担当者、日本で言えば官房長官側近辺りから通告を受けたことになるんでしょう。そのときホワイトハウスの記者クラブは、CNNはもちろん、普段CNNと敵対するような報道も多い保守系のFOXニュースでさえも、みんなでこの記者をかばって、「出禁にするようなことはあり得ない」という意思を見せたんです。

その出来事とは対照的に、今回のジャニーズ記者会見の現場は、記者たちがバラバラに分断されて、それは気をつけなきゃいけないなと思いました。たしかに騒然とした人たちに対して、「なんでこんなに騒ぐんだ」と思うのは当然のことかもしれません。

しかし、ここは新製品の発表会見とかではないわけですよ。会社の不祥事、疑念とか疑惑があって、それを釈明するための会見だったのに、それを追及する側の人たちが分断してどうするんだっていうことです

◆フェアかアンフェアかでジャッジ

以前も話しましたが、正しいか正しくないかという見極めは、本当に難しいなと思っています。RightとWrongは立場によって違います。そういうとき、どういうふうに考えるのが一番いいかというと僕は「フェアかどうか」を自分に問いかけるようにしています。

RightかWrongかではなく、FairかUnfairか。それも絶対ではありませんが、まだ幾分冷静なジャッジに繋がるんじゃないだろうかと、経験上思っています。あなたも、あの拍手が起きたときに、自分だったらどうするかを考えてみてください。

好感度の高い井ノ原さんに手紙を読ませることもフェアかどうか。やはりいろんな意味で、タレントが報道に関わったり、会社経営やスポークスパーソン的なことをやったりすることは危険だという一つの例ができた気がします。

以前、井ノ原さんが出演する番組で共演したことあるんですが、本当に気持ちの良い方でした。僕だってあの会見の場にいたら、やっぱり彼の好感度に酔ってしまっていたかもしれません。