「翼を広げて羽ばたいてほしい」圧倒的な存在感で日本のHIPHOP界をけん引する沖縄出身のラッパーAwich。「慰霊の日」を前に沖縄の過去・今・未来について語りました。
■「みんな大嫌い」曲に込めた沖縄への“複雑な思い”

「すごく沖縄って感じ」
沖縄・嘉手納基地の前で、飛び交う航空機を眺めるラッパーのAwichさん。Awichさんにとって、米軍基地の存在は、幼いころから当たり前のものでした。
Awichさん
「フェンスを隔てて違う国だし、 フェンスのこっち側とあっち側の生活が絡まり合っていくカルチャーが生まれている。フェンスラインカルチャーって私は呼んでいます」

沖縄独特の環境で育ち、そこで目覚めたのがRAPをすることでした。
特長は強烈なリリックと圧倒的な存在感。3月には日本武道館で単独公演を果たすほど、男女問わず支持されています。現在35歳でシングルマザーの彼女は“極東の女王”を名乗り、日本のHIPHOPシーンをけん引しています。
楽曲でたびたび触れるのは、生まれ育った“沖縄のこと”。
「Queendom」より:
安売りした my body and soul
鼻で笑われてた「bitch you a Hoe」
死ぬほど憧れたフェンスの向こう
大嫌いだった Okinawa is my home
飛び交うヘリコプター
ここから飛び立ちたかった
重くしがらむこの島のカルマ
潜り抜けて開く次のchapter
自身のストーリーを歌ったこの曲では、沖縄への“複雑な思い”を綴っています。
Awichさん
「私は小さい頃から何か大口を叩くのが得意だったから『こういうことしたい、ああいうことをしたい』と言ったら『は?そんなの無理だよ』みたいな。『普通に生きなさい』みたいなことを言われることが多かったり、対立するみたいなのがいろんなところであった気がしていて。そのたびに『みんな大嫌い、こんなところから出ていってやる』みたいな。思うことが小さいときからあった」
■「生き抜いてきた人たちがいたからこそ私がいる」祖父から娘へつなぐ平和
AwichさんがRAPを始めたのは14歳。当時の写真を見せてもらいました。
Awichさん
「これは私が中学校の時に名前を自分でAwichって決めたとき。中2の時に決めました」

Awichとは、本名「亜希子」の直訳、Asia(亜細亜)Wish(希望)Child(子ども)を略した造語だそうです。
国山ハセンキャスター
「(壁画の写真を見ながら)めちゃくちゃかっこいいじゃないですか、自分で描いている感じ」

Awichさん
「当時住んでいた家の庭の壁に描いたんですよ。早かったです、14歳の時に全部やった」
大切な思い出は、まだあります。
Awichさん
「この写真はおじいちゃん。104歳で亡くなった」

祖父から“戦争の話”を聞くことが大切な時間でした。
Awichさん
「兵隊として駆り出されていたので、戦っているときや逃げてお墓の中に隠れていた話とか。混沌とした時代の。本当にそこで生きていたんだ、みたいな」
国山キャスター
「6月23日は沖縄慰霊の日です。Awichさんはどのようにして過ごされてきましたか?」
Awichさん
「おじいちゃんが生きているときは平和祈念公園とかに行ったりしていたので、ついて行ったりして戦争体験者の話とか聞いたり。1人で、たくさんの人が亡くなったって言われる浜辺に行ったりして、そういう状況を思い浮かべたり。生き抜いてきた人たちがいたからこそ私がいるんだなと。できるだけ理解しようとする、できるだけ想像しようとする、できるだけその時の気持ちを感じてみる、努力をするということをやっていた。そうすることで、平和の尊さみたいなのをまた大切に思える」