いすゞ自動車は2023年3月、小型トラックの電気自動車、エルフEVを発売した。脱炭素社会が急速に進む中で、いすゞ自動車のEVトラック戦略について南真介社長に話を聞いた。

2030年に1万台目標。走行距離に合わせバッテリー数を選択

2023年3月、いすゞ自動車は16年ぶりにエルフをフルモデルチェンジした。エルフは1959年に発売してから累計生産台数は730万台を超え、2022年の販売シェア第1位、小型トラックの代名詞と言われている。新たにラインナップされたのが、いすゞ自動車初となる電気自動車、エルフEVだ。

商用車業界もEV化の動きが加速する中、23年4月に新社長に就任したのが南慎介社長だ。エルフEVはバッテリーを顧客のニーズに合わせて2個から最大5個まで選択することができる。航続距離は100キロから150キロ程度だ。現在はリースのみの契約となる。

――エルフにEVをラインナップした狙いはどこにあるのか。

いすゞ自動車 南真介社長:
トラックについては、電動化は非常にハードルが高いということですが、小型トラックはうまくいきそうだということで今回出させていただきました。

――EVエルフの優れているところと課題は?

いすゞ自動車 南真介社長:
エンジン車の形を変えないということをまず大事にしました。お客様は既存の車と一緒に使いますし、荷物の運び方あるいは荷物の下ろし方、積み方を違う形にするのはよくないだろうということです。それともう一つはバッテリー。いくつかのバリエーションをそろえています。お客様によって走行距離が違うので、それに合わせてバッテリーの積む数を変えるという形を取らせていただいたということです。

――エルフEVの引き合いはどうか。

いすゞ自動車 南真介社長:
お客様からの反響はかなり大きいです。実際に登録していくのは10月からで、今年はまだ大きな台数にならないですが、来年は1000台ぐらいは登録していくことを目指しています。

――エルフのどれくらいの割合がEVになるのか。

いすゞ自動車 南真介社長:
1000台ではまだ数%ですが、2030年には1万台を売ろうと思っています。1万台ですと、二、三割はEVになると考えています。

――EVはバッテリーの重さや値段が問題になってくる。今の状態だとバッテリーが重いので、その分、積載量が落ちたりするのか。

いすゞ自動車 南真介社長:
はい、当然そうなります。特に大型トラックの場合は、バッテリーで動かそうとすると、乗用車の20~30倍ぐらいのバッテリーが必要になります。そうするとバッテリーだけで4~5トンということになってしまいますので、大型トラックについては水素を使って燃料電池で発電し、モーターで動かすのが合理的かなということで、今その方向で開発を進めています。

――電動化はいつ頃までにフルラインナップにできると見ているのか。

いすゞ自動車 南真介社長:
2030年までに全てのセグメントで電動車を出そうと。

――車はガソリンや軽油で動くものだというのが常識だったので、それを使わない車を作ることになるとは思っていなかったのでは?

いすゞ自動車 南真介社長:
当然それは全く思っていなくて、しかも4、5年前までは思っていませんでした。

――資源が限られている中でEVも燃料電池車も内燃機関を残した形でのエンジンの開発も続ける。大変ではないか。

いすゞ自動車 南真介社長:
外部の方をパートナーにして、今いろいろなことをやっています。この技術は自分たちでやろう、ここはいろいろな方と一緒にやろう、あるいはこの技術はどこの会社さんとを組もうというような形ですみ分けをして。かなり早くから考えていたので、今ほとんどマップが固まりつつあります。