「メディア、企業、広告代理店…クライアント側にも、一端の責任はある」問われる企業ガバナンス

ジャニー氏の性加害を事務所が認めて以降、企業が次々と所属タレントの広告への起用を見直すなど、波紋が広がっている。

新規の契約の見送りを表明しているサントリーホールディングス。

その社長で、経済同友会の代表幹事も務める新浪剛史氏に、2度目の事務所会見の評価を聞くと…

経済同友会代表幹事 サントリーホールディングス 新浪剛史社長
「まず進展したなということは考えております。一方で今後新しい会社とどう契約をしていくかというのは、再発防止のガバナンスはきちっとしていただかないといけないということで、引き続きそういう話を続けること。また、それが納得いく形であるということが大前提で再開を検討することになる」

一方で、ジャニー氏の性加害がまだ噂だった段階で、広告に起用しない判断をしていた経営者がいる。
ネスレ日本の前社長・高岡浩三氏だ。

ネスレ日本 高岡浩三 前社長
「今の時代、ガバナンスとその収益と、どっちをとるんだといったときには、グローバルにはむしろガバナンスの方が大事。それをないがしろにすると、どんな強いブランド企業であっても一夜にしてその信頼は崩れて、今回のジャニーズ事務所のようなことになってしまう」

起用しない判断を後押ししたのは、かつてネスレが受けたネガティブキャンペーンだった。

ジャニー氏による性加害の噂を耳にした段階で、所属タレントを起用しない判断をしたネスレ日本の高岡前社長。

教訓にしたのは、スイスに本社を置く「ネスレ」が経験した出来事だった。

2010年、取引会社の違法な森林伐採を問題にするキャンペーンが国際環境団体によって展開された。
だが、ネスレは、その取引会社の悪い噂を聞いた2000年の段階で、取引を中止していたため、事態の悪化を避けられたという。

Q.やっぱり噂段階で動くことって大切なんですかね?

ネスレ日本 高岡浩三 前社長
「ガバナンスに限っていうと、やはり取引先のそういうグレーな噂っていうのを耳にした段階で、動くネスレを見たときに、自分もそうしなければいけないんだなっていうことは非常に強く思いましたね。転ばぬ先の杖ではないんですが、そういう勇気を持ってガバナンスに対処するっていうことが、いかに大事なことか。それが多分、ネットの時代だからこそ余計にそうなんじゃないでしょうかね」

Q.でもそれってやっぱり勇気がいることですよね?

ネスレ日本 高岡浩三 前社長
「もちろんです。だから、社長の判断だと私は思ってるんです。社長の仕事だと」

海外では、著名人の性加害が明るみに出た際、その直後に、取引先の企業などが関係を絶つ例が相次いでいる。

アメリカ・ハリウッドで絶大な権力を持っていた、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏も、長年にわたる性加害を告発された。

契約していたアマゾンやネットフリックス、自動車ブランドのレクサスなど、多くの企業が告発後すぐに取引を停止したと報じられた。

ネスレ日本の高岡前社長は、ジャニー氏の性加害が長年放置された背景には、ガバナンスよりも利益追求を優先する日本の企業の現状があると強調する。

ネスレ日本 高岡浩三 前社長
「メディア、企業にも、それから広告代理店にも。それから使っているクライアント側にも、一端の責任はあるというのがグローバルの今のガバナンスの考え方だと。それがちょっと日本にはあまりにもなくて、売上げ至上主義に関係していると思ってるんですけど。(ジャニーズ事務所の)広告という収益源。もし反省をするのであれば、そこに焦点を当てないと、この問題の解決の糸口は絶対に見えてこないと思うわけですね」