事実上の破綻処理の始まりか
恒大に何が起きているのかは、こうした断片情報をもとに推測する以外ありません。
創業者を含めた元幹部の連行や拘束は、犯罪としての責任追及が始まったと考えるのが自然です。
債務や契約の不履行など「焦げ付き」が出ている以上、事件として責任追及しなければ収まりがつかないということなのでしょう。
過去を振り返れば、金融危機で経営者の責任追及が始まった際には、いくつか共通の背景があることがわかります。
とても債務や契約の全額保護などできなくなり、不利益を被る人々を少しでも納得させる必要が出て来た場合です。
また、一定の債権毀損を強いた上で、公的資金投入への世論の理解を得るためというケースもあります。
さらに言えば、政策の失敗や監督体制の不備に対する世論の批判をかわしたい時にも、旧経営者の犯罪性を強調することがあります。
事実上の破綻処理の行方は
中国恒大は「経営再建中」という建前にはなっているものの、2023年6月末時点で債務超過額は6442億元、約13兆円にも達しており、すでに事実上の破綻状態です。
直ちに破綻宣言しては収拾がつかなくなるので、とりあえず当局の公的管理下に置いて時間を稼いでいるというのが実態でしょう。
旧経営陣への責任追及が始まったのであれば、踏み込んだ対応、いわば「処理」が始まったサインかもしれません。
その対応策は、今後続々と出てくるであろう、中国不動産大手の「破綻」に対するモデルとして、注目されるところです。
日本のバブル崩壊を徹底的に学習したとされる中国当局は、いわゆるハードランディングは高くつくと考えているのでしょうが、うまく乗り切ることができるでしょうか。
まずは、外貨建ての債務再編を通じて、国際金融市場への影響を最小限に抑えられるかが、大きな関門になります。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)














