
撮影したバイには小川が流れる湿地になっていて、他の動物たちもここに水や食べ物を求めてやってきます。絶滅危惧種のニシゴリラも、群れで出現。

草食のゴリラは、森では食べられないミネラル豊富な草を食べに来るのです。またゾウが森の中を歩くことで「ゾウ道」が出来て、他の野生動物もこの道を使います。さらにゾウは植物の実を食べては移動し、その種を遠くの地でフンとしてばらまき、種を散布するということもしています。このようにゾウはこの地の生態系に大きな役割を果たしているのです。この点も王蟲とよく似ています。
またナウシカの中では、王蟲の殻は高強度で軽いため、剣などの武器の材料として珍重されています。同様にゾウの象牙も珍重され、そのために乱獲された結果、今やゾウの多くは絶滅危惧種となっています。タイのカオヤイ国立公園も、ガボンのイヴィンドゥ国立公園も貴重なゾウの生息地。絶滅の恐れがある種や、生物の多様性の保全にとって、最も重要な場所のひとつとして世界遺産になったのです。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太