横浜、広島、西武とプロ野球3球団で活躍し、2017年からクリケットに転向した木村昇吾選手(43、ワイヴァーンズ クリケットクラブ)。日本代表としてアジア版のオリンピックと言われるスポーツの祭典、アジア大会(23日開幕)に出場することが決まっている。世界の競技人口はサッカーに次ぐ世界2位(日本クリケット協会HPより)とも言われ、野球の原型ともされる“クリケット”の魅力を、「TBSアジア大会応援団」で元プロ野球選手の杉谷拳士さんが取材した。
オファー受け即決!クリケットの世界へ
杉谷拳士さん:木村選手は尽誠学園(香川)から愛知学院大学、そして横浜ベイスターズ、広島カープ、西武ライオンズ。そして今、クリケット日本代表ということで・・・。
木村昇吾選手:(杉谷さんは)日本一のコメディアンベースボールプレイヤーでしょ?(笑)
杉谷さん:ありがとうございます(笑)木村さんが引退されて、新しいクリケットっていう道を選んだときに、野球界が騒然としたんですよね。日本ハムファイターズの中でも、「木村さんクリケットやるらしいよ」「クリケットって何?」みたいな。なんでクリケットにいこうと思ったんですか?
木村選手:まだプロ野球選手としてやりたかったんですけど、そのオファーがなくて。社会人野球の兼任コーチとかのオファーはあったんですけど、まだ100%アスリートでやりたいって思って・・・その時に「クリケットをやりませんか?」っていうお誘いを受けたので、やってみようかなと。電話をもらってものの5分で決めました。
杉谷さん:その当時クリケットは木村さんの中ではどんな競技だったかわかってたんですか?
木村選手:全然(笑)僕もびっくりなんすけど、西武ライオンズの2軍の練習場で打撃練習をしているときに電話がかかってきたの。「クリケット」って言われて、もう自分がやってる姿が浮かんじゃったの。
杉谷さん:そこからルールとかも?
木村選手:そうそう。ここに来させてもらって、日本クリケット協会の人とかと一緒にやらせてもらって、代表の人も来て練習して・・・なんやこれ!って(笑)
杉谷さん:投げる人がいて、打つ人がいて、守備する人がいて、野球と似てるようでちょっと違うのかなと思いながら・・・クリケットで言ったらこの3つの要素ってどういうポジションになるんですか?
木村選手:打って投げて走っては一緒。ただ、360度どこに打ってもいいとか、試合時間がちょっと長かったりとか、攻撃のシステムがちょっと違ったりとか。ただ、クリケットの方が(野球より起源が)早いから、野球の原型といわれるスポーツなので親和性がすごいあると思う。だから野球人は絶対やるべき(笑)
秋山翔吾、近藤健介ばりの“縦振り”
杉谷さん:(笑)投げ手が「ボーラー」で、打ち手が「バッツマン」、ディフェンスの方が「フィールダー」。ルールとしては、プロ野球だったら、ノーバンで投げるじゃないですか。クリケットの方は?
木村選手:肘を曲げないまま、ワンバウンドでウィケット(3本の柱)にめがけて投げる。それをこのバットで・・・盾みたいな感じ。持ってみる?

杉谷さん:おっも!これ。野球の1.5倍ぐらい重いですよね?
木村選手:1.3kgあるね。ボールはこれ。
杉谷さん:めちゃくちゃ硬い。
木村選手:これをフィールダーは、素手で捕る。顔の前だと抜けちゃって危ないから、野球は顔の前で捕るけど、(クリケットは)ちょっと横で捕る。
杉谷さん:相当硬いですよ。危ないですねこれ。(当たったら)痛いですよ。
木村選手:これがボールで、重たいバッドなので結構飛ぶんですよ。
杉谷さん:いや本当に重いです。マスコットバット(野球のトレーニング用バット)よりも重いです。
木村選手:打ち方としては、相手はウィケットを倒せばいいからウィケットにめがけて、ワンバウンド(のボール)を投げてくるんですね。だから構えはこうやって、こうやって打ちます。

杉谷さん:秋山翔吾さん(広島)ばりの縦振りだ(笑)
木村選手:そういうことよ(笑)近藤健介(日本ハム)ばりの縦振りで、木村昇吾がやってんのよ。秋山翔吾がやっているのを木村昇吾がやってるから。
杉谷さん:守備はどれぐらいなんですか?野球って90度じゃないですか、クリケットは360度で守備体系はどうなるんですか?
木村選手:一応前にもいるし、後ろにもいる。(ポジショニングを)決めるのはキャプテン。11人いるので・・・
杉谷さん:9対9じゃなくて、11対11?
木村選手:そう。だから投げる人、捕る人以外の9人で全方向守ってる感じ。そのボウラーとバッツマンの兼ね合いでキャプテンが全部決める。実はルールは野球より簡単で、他のスポーツの中でも野球ってだいぶ難しいの。クリケットは野球よりも逆にルールが少ない分、自由度が多くていろんなことができる。360度どこに打ってもいいから、これっていうのがあるけどないようなもんで、打てればいい。
杉谷さん:言ってみれば、(野球での)ファールもフェア?
木村選手:そうそうファールがないから。しかもデッドボールがないので当たっても大丈夫。(プロ野球選手は)足元にきたらよけちゃうやん。でも打たないといけないから、僕はもうよけないよね。
ディレクター:マックスどれぐらいのスピードなんですか?
木村選手:海外では150km/hとかいます。
杉谷さん:この球で150km/hはちょっと本当に想像つかない。
木村選手:(プロ野球で)150km/h打ってきたと思うけど、ワンバウンドした150km/hはないでしょ?目では多分速さは感じてるけど間に合わないんですよ。打ったことがないところだから。日本では150km/hはないです。速くても120km/hとか130km/hぐらいですかね。

ディレクター:変化球は?
木村選手:変化球はもうね、スピナーって言ってもうすんごいの(笑)カーブできて、逆行ったり跳ねたり、跳ねなかったりさせるの。
杉谷さん:3アウト制は変わらないですよね?
木村選手:3アウトじゃない。例えば僕と杉谷くんが最初2人で入ってて(攻撃側は2人のバッター がグラウンドに入る)、どっちかがアウトになると、次のバッツマンが入ってくる。11人だから、10アウトになるとオールアウトになって攻守が変わる。(試合形式により)球数が元々決まってるので、球数の間に何点取れるか。11人がアウトにならないように、打つ方は打つ。守備側は早く10アウトにしたいというスポーツ。
杉谷さん:変な話アウトにさえならなかったらずっと打ってるから、100点ぐらい入る可能性もあるってことですよね?
木村選手:そういうこと。だから長いというか日本のリーグで、3時間ずっと打ち続けて121点取って、アウトにならないとかはたまにある。
杉谷さん:僕、クリケットのイメージって、3日間ぐらい試合するようなイメージがあったんですけど、それも大会によって違うんですか?
木村選手:形式が色々あって、5日間というのが最大であるけど、1日で終わるものもある。アジア大会は「T20」と言って攻撃が1時間半、守備が1時間半で3時間ぐらいで終わる(試合形式)。野球だったら先攻後攻ってホームアンドアウェイみたいな感じであるでしょ。(クリケットは)試合前のアップが終わって、お互いのキャプテンがコイントスをやって決める。